「動けない大国」アメリカの行方 第2回:これまでの米外交から見たオバマ外交 /上智大学・前嶋和弘教授
ただ、同時にこれまでの対テロ戦争のために急激に増えた国防予算のツケを議会は大統領に求めることになったのは大きな誤算だったかもしれない。議会は2013年3月から国防費を含む、歳出一律強制削減を発効させたため、その後のオバマ外交は、軍事費を効果的に使う必要性に迫られてきた。“やりくり”を考えながら、外交戦略はどうしても受動的なものになりがちである。 2つ目は、オバマ大統領自身の性格そのものに起因する。熟議を好み、現実を重視する姿勢は指導者に欠かせないものの、第二次大戦時のフランクリン・ルーズベルト、あるいは過去30年ではレーガンやクリントンのように、アメリカ大統領には国民を理念的にまとめあげていくような強い信念が必要である。現実的な選択を重視することは、どうしてもリーダーシップに欠けてしまうようにみえてしまう。 歴史的なタイミングにしろ、プラグマテックな性格を「不幸」と呼ぶのは、言い過ぎかもしれないが、国際的な秩序維持に影響するとしたら、少なくとも幸福なことではないのかもしれない。 ※この連載は5回続き。第3回「『議院内閣制化』するアメリカ政治」は25日(月)に掲載予定です。