女優 奈緒さんが考える、保健体育では教わらない「性」の伝え方…大人になるからだを「どう受け止めるか」もっと知りたかった
性の格差について世の認識が激変した2年間を経験して
――『先生の白い嘘』に触れた人なら、一度は考えることがあります。それは、なぜ性の格差がなくならないのかということです。 同じ性を持って生まれても、人によって性の捉え方は全然違いますよね。今回映画では描ききれなかった部分で、美鈴のクラスに三郷佳奈・通称ミサカナちゃんという印象的な女子高生が出てきます。自分の抱える性や、自分が生まれ持てなかった性に対しての認識というのは、一人ひとり大きな違いがある。この象徴的な存在として、原作ではミサカナちゃんが描かれていました。 性の格差をなくすには、まずは性に対する認識の違いを互いに知ろうとするところからしか生まれないと思います。違いをわかり合うのではなく、互いを理解しようとする思いが足りなかった時に、きっと性差が生まれてしまうのかなと。 自分自身を愛せるかということ、持って生まれた性を愛せるかということ。人それぞれが持って生まれた性はその人にとってものすごく大切なものなんだということを、一人ひとりが理解して、寄り添おうとする。もちろん、人は時に流されて、自分と相手を大切にしない行動をすることもあります。弱い部分があるのも当たり前です。だからこそ、性の格差がなかなかなくならないのかなとは思っていたのですが……。 撮影が終わってから公開までの2年間で、世の中がものすごく変わりました。強者と弱者が生まれない仕組みや、性の格差が生まれない仕組みなど、正直他の現場でも、ものすごく変わっていくのを体感しているんです。少しずつ変わろう、変えたいって思うことがあれば、世の中も変わっていける。このことを2年間で実感でき、今は希望を感じています。 でも、あっという間に世の中がひっくり返ってしまうこともあります。何かを変えたいと思って、圧倒的に強い力に対して立ち上がろうとした時に、気がつけば強者と弱者の構図が形を変えて生まれてしまうこともあると思います。現実は常に危険性を孕んでいるということを、この時代に一緒に生きているみんなが同じ共通認識として持っていないといけない。そうしたことを、すごく考えるようになりました。