自由になりすぎても、欲求不満に陥っても問題が…第二次性徴が顕在化する思春期に起こる「性の目覚めと性的問題」
容姿にこだわる思春期
第二次性徴の顕在化に伴い、外見に過敏になるのも思春期の特徴です。 鏡を見る回数と時間が増え、熱心に髪型を整えたり、化粧に凝ったり、服装やアクセサリー、時計や靴などのファッションにも強い関心を示すようになります。 そこには自ずと優劣が生じ、優越感や劣等感が複雑に絡み合います。顔の細かなパーツ、身長や体形にコンプレックスを持ち、悩んだり卑下したり、自己嫌悪に陥ったりして、精神の健康を害することもあります。 自分の容貌を過度に貶め、強い拒否感を抱くと、「醜形恐怖症」になることもあります。この場合、客観的にはそれほどでもないのに、自らを醜い、魅力がない、人に不快感を与える、怪物のようなどと、過剰に否定します。自分の外見を嫌っているにもかかわらず、長時間鏡を見つめたり、服装や化粧で欠点を隠そうとしたり、経済的な余裕があると美容整形や矯正歯科に何度も通うことになります。重症の場合は日常生活が困難になり、入院加療を繰り返したり、自暴自棄になって自殺に至ることもあります。 好ましい外見でも、内面が疎かになり、かつ優越感が顔に表れたりして、中身のないヤツとして評価が下がることもあります。顔の善し悪しなどは、人間の本質には関係がなく、大人になっていろいろな経験を積めば、人格が顔に表れるようにもなるので、内面を磨くほうが大事だとわかるのですが、思春期にはそこまで理解するのはむずかしいと思われます。 それでも容貌に悩んだことをバネにして、別の価値観に目覚め、勉学やスポーツ、ボランティアや芸術などに打ち込み、内面を高めるケースもあります。 第二次性徴が明らかになることで、身体の性と心の性が一致しない性別不合が顕在化するのもこの時期です。 今はLGBTQへの理解も深まり、ひとりで悩むことも以前よりは減っていますが、親に打ち明けにくいとか、周囲の反応が不安だとかいう場合も少なくなく、世間のさらなる理解が求められます。性別不合は本人が悪いわけでも、努力で変えられるものでもないので、こだわりなく受け入れられるべきです。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)