<福山潤>「狼と香辛料」新作で「一から演じる」望外のチャンス 15年前は「一番苦しかった」
「狼と香辛料」の収録で後悔を感じたこともあったという。
「ロレンスのキャラクターを考えても『もっとラクにやってよかったんじゃないかな?』『もっと幼くてもよかったんじゃない?』とか自問したことはあるんですけど、『いやでも、そこで日和(ひよ)るんだったらもうダメでしょ』とかいろいろなことを考えながらやっていて。当時の自分の中では挑戦でしたし、当時のプロデューサーも、僕を選んだのは『賭けだった』と言っていた。賭けてくれたのであれば、自分も自分に賭けないとしょうがないよね、と。すごく当時も受け入れていただいて、作品としては人気があったと思うんですけど、そこを考える余裕はなかったですね。自分の中ではうまくできていると思っていなかったので。だから、オンエアの自分の声を聞いても『自分の中でやろうとしたことがやっぱり届いていない』とか、そういう思いばかりが強くありました」
とはいえ、当時の自身の“青さ”が良い意味で作用していたとも感じているという。
「その“青さ”がロレンスとかぶってはいたから。演じる側の気持ちとしては、リアルな青さじゃないほうがいいんですよ(笑い)。作った青さの方が僕としてはうれしいんですけど、当時は、青さに助けられているよな、というのは多々ありましたね」
◇ホロ役の小清水亜美と「久しぶりの1000本ノック」 昔より「踏み込めている」
「狼と香辛料」は、ロレンスとホロの丁々発止の会話劇が魅力の一つとなっている。福山さんは「二人のやり取りでは、僕はほぼ受けぜりふで、仕掛けていくと大体返り討ちに遭う流れになるので、新作の収録では久しぶりに1000本ノックをやっているな、というイメージです」と語る。
「最近は、比較的渡すせりふのポジションの役柄が増えてきた中で、『狼と香辛料』で改めて全部のせりふを受けるというのが、やっていて楽しいなと感じます。ストーリーは変わらないですが、受け方一つ、渡し方一つ、返し方一つで、もっとニュアンスが乗っけられるとか。昔よりは『踏み込めている』という実感はあって、指先ちょっとかもしれないですけど、それが今回、15年ぶりに新作を作る意義のエッセンスになっていたらいいなとは思います」