<福山潤>「狼と香辛料」新作で「一から演じる」望外のチャンス 15年前は「一番苦しかった」
「もちろん、15年前に演じたロレンスを基にはするんです。そこから外れてしまったら、もう僕でやる意味がない。とはいえ、15年前の状態を改めて自分で作るのはナンセンスだよなって。だから神経を使いますよね。15年前の演技を事細かに覚えているはずはないですが、体のどこに力を入れてやっていたかとか、どういうふうに体に負担があったかとか、実感は残っている。でも、今とは肉体の筋力すら違うので、その感覚を頼りにやるとやりすぎちゃうことになるだろうと。だから、過去のものは過去のものとして、今もう一回、一からにしようという」
福山さんは、前作をあえて見返さなかったという。
「『昔はこうだったよ』という比較対象を持ち込んだら、もうクリエーティブはなくなるでしょう?と。演出サイドから『昔に合わせて』というディレクションがあれば、もちろんそうしますが、僕から『昔はこうだった』というのを一切出したくないなという思いがあって、過去は一切振り返らないようにしていますね」
◇「青かった」15年前 「何とかやっていかなきゃ」
前作が放送された約15年前、福山さんは2007年に「声優アワード」の初代主演男優賞を受賞し、各アニメ系雑誌の賞を総なめするなど、人気若手声優の一人として注目を集めていた。当時は、少年のキャラクターを演じることが多かったが、「狼と香辛料」では、青年行商人のロレンス役に挑戦することになった。福山さんは当時を「一番苦しかった時期でした」と振り返る。
「当時は土台が少年役で、比較的ハイトーンで、しかも個性的ではない普通の少年が一番得意だったんです。それがちょっと個性的な役で認知してもらったおかげで、いろいろな幅を持った役をもらえるようになっていました。ただ、その期待に自分が追いついていない中で『何とかやっていかなきゃ』という時期だった。だから、いろいろ難しいことを自分の中でやっていたなと思います。それは、間違いではないんですけど、当時は『このラインでやればうまくできる』みたいな楽観的なポイントは一つもなかったです」