センバツ2024 広陵、十回力尽きる 七回まで緊迫の投手戦 /広島
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催されている第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で広陵は27日、青森山田と2回戦で対戦した。終盤まで息詰まる投手戦が続き、広陵が八回に先制して試合を決めたかに見えたが、2度のリードを追いつかれ、延長十回タイブレークで力尽きて敗れた。好ゲームを見守ったスタンドの応援団からは熱戦と奮闘に大きな拍手が送られた。【武市智菜実、野原寛史】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 七回まで両者一歩も譲らない展開。エースの高尾響は七回まで無安打無得点の好投を続けたが、広陵打線も4安打に抑えられた。息を詰めて見守るアルプススタンドの応援団は、高尾が三振を奪うたびに盛り上がった。「少しハラハラしているが、必ず勝ってくれる」。野球部OBの清水大慈さん(19)は赤いメガホンを力強くたたいた。 「僕が夢見たあの甲子園 僕はどれくらい知ってるんだろう 苦しい時も 悲しい時も 何度も目指してきた あの場所を」。応援団が歌う中、始まった八回に試合が動いた。2死二、三塁で7番・白髪零士が左前にはじき返し、只石貫太が本塁を踏んで先制。敵失の間に沢田哉斗も還って2点を挙げるとスタンドは歓声に包まれた。左打者の白髪にとって、レフト方向へのヒットは初戦から4本目。「逆方向に打球を飛ばせるように冬場、練習してきた成果が出た」 その裏に追いつかれ、振り出しに戻った九回、中前打で1番・浜本遥大が出塁。1死一、二塁から3番・土居湊大の打球が左翼手の頭を越えて適時二塁打となると、父康信さんは両手をあげて「良くやった」と喜んだ。さらに2死二、三塁で5番・世古口啓志が中前打。「怖がらずに自信を持って打席に立った」と胸を張った。 ここまで踏ん張ってきた高尾だったが、九回裏にまさかの3連打を浴び再び振り出しに。タイブレークの十回、無死満塁から犠飛を許した。高尾は「終盤までしっかり守り、勝ち切れる投手にならないといけない」と落ち着いた表情で話し、グラウンドを後にした。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇大好きな仲間 一打で一つに 土居湊大選手(3年) 「自分が打って勝たせるという気持ちで甲子園に来た。緊張はなかった」。強い覚悟が同点で迎えた九回に花開いた。1死一、二塁のチャンス。21日の高知戦で無安打に終わった悔しさも込め、初球を振った。左翼手の頭を越え、1点勝ち越しを見届けると、塁上で笑顔がはじけた。 これまで打撃の調子に波があったが、本番に合わせる調整力が光る。昨秋の中国地区大会決勝は3打席三振。悔しさをバネに練習し、10日後の明治神宮大会は4打数4安打と大当たり。 チームの仲間が大好きで「頼れるエースを助けるバッティングをしたい」「初めて来た甲子園で活躍する2年は大したもんだ」とプレーをたたえ、アドバイスしながら雰囲気を盛り上げてきた。 塁上からベンチを見ると高尾らが勢い良く拳をあげ、スタンドの部員たちも飛び上がって喜びを爆発させていた。大好きなチームが一丸となる瞬間を作った。 「言い尽くせないほどたくさんの課題が見つかった。これから1試合ごとに成長して、夏は日本一を取る」。真剣な目つきで前を見据えた。