フリーアナウンサー・神田愛花『“芸能人のプライバシー”について考えた』
″芸能人のプライバシーはどこまで守られるべきか″
先日、フジテレビ系『ワイドナショー』に出演した。フリー転身後、まだお仕事が少ない頃からオファーをくださり、私にとっては、(自分は芸能界に必要ない存在なんだ……)と思い悩む日々から救い続けてくれた番組だ。感謝の気持ちから、この番組の収録準備には自然と力が入る。前日の夜は3~4時間かけて、扱うニュースの情報を収集し、自分の考えをまとめ、コメントを整理するのだ。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~71回)はこちら 今回は、ある芸能人が週刊誌の記者から数ヵ月にわたり執拗な付き纏(まと)い取材と隠し撮りに遭い、辛いからやめてほしいとSNSで発信したニュースを扱った。収録では“芸能人のプライバシーはどこまで守られるべきか”という議論になった。 この件に関する私の考えはこうだ。 芸能人も人間なので、取材とはいえ精神的にダメージを与えるような行為はよくないと思う。ましてや私有地に立ち入る取材や、外から自宅の中を撮影する行為は、犯罪にあたるのではないか。一方、元々報道機関で働いていた身としては、報道の自由は保たれるべきだとも思う。芸能人は公人ではないが、言動が一般社会へ影響を与える存在だ。よって公道や不特定多数の人が出入りする飲食店などで、突然取材をされたり隠し撮りをされたりするのはある程度仕方がないと思う。ただ“報道の自由”を振りかざす以上、週刊誌側は取材に基づいた真実を発信する責務があると思う。 収録では出演者全員が発言するため、一人がこんなに長く話すことはできない。概ねこのような内容を喋った。 では共演者たちはどうか。印象に残った意見を挙げると、 ①芸能人はプライバシーを商売にしていることもあり、プライバシーの権利を主張しても一般の方に比べ弱い。裁判所も一般の方に対する考え方とは若干違う。 ②隠し撮りされて悲しかったけれど、後日それが仕事でネタになり、皆さんが笑ってくれた。結果的によかった。 ③自分から私生活を発信するのはいいが、なぜ週刊誌が勝手に拾って発信するのか。ネタをパクられているのと一緒だ。 ④“報道の自由”と言うが、昔と今とでは違う。 ⑤オイシイと思える範囲は越えないでほしい。それはもうお笑いではなくなってしまう。 ⑥皆同じ人間で道徳がある。逆に記者のお子さんの写真を晒すぞと言ったら、嫌がるでしょ? だから歩み寄ってほしい。 などだった。私の考えよりももっとプライバシーが守られるべきだ、という意見が多かった。 ◆芸能人の中でもわかれる意見に驚き 私は子どもの頃から、有名人がワイドショーや週刊誌に出ているのを見てきた。だからもし自分が芸能界に入り、知名度が出たら、週刊誌に追い回されることくらいあるだろうと想像していたので、私はある程度覚悟済みだった。芸能人は皆そうかと思っていたが、よっぽど嫌な思いをしたのだろうか、いざその立場になると「やっぱり不快」と思う人が多い現実に、少し驚いた。 また、③の“ネタをパクられているのと一緒だ”という意見は私の中にはなかった視点で驚かされた。プライベートが先に週刊誌に掲載されると、トークネタになりにくくなってしまう。(なるほど!)と思う一方で、今の芸能界で第一線を走り続けている方々の中に、プライベートのトークネタの印象が強い方っていらっしゃったかなぁ? とも考えた。いや、巧みなMCやトーク技術で活躍し続けているイメージの方々ばかり。私にはそのような方は一人も思い当たらなかった。 私なんかがこんなことを言っても説得力はないが、この視点を私に教えてくださったその方も、とてもトーク技術が高い。プライベートでの出来事をいくつか先に週刊誌に掲載されたところで、トーク内容にはダメージゼロでお仕事ができるだろう。この思いを直接お伝えできるような立場ではないので、「そんな心配をなさらなくても大丈夫ですよ!」と本番後にスタジオを去っていくその方の背中に向かって、心の中で伝えた。 今回芸能人のプライバシーについて、張本人たちの意見を考察してみた。芸能人のプライベートを取材し掲載するので有名なこの『FRIDAY』の読者の皆さんは、何を感じ、どう考えるだろうか。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年12月27日号より イラスト・文:神田愛花
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