「グループにとって悪影響だった」――山本彩が振り返るNMB48、一人で立ち向かった「恐怖」と「26歳の開花」
「食べていけるか」1人になった“重み”
年が明けた2019年、約3カ月のブランクを経て、山本は一人のシンガー・ソングライターとしてステージに舞い戻った。2月に始まった全国ツアー「I’m ready」は、数百人規模のライブハウスを軸に展開した。グループ在籍時に経験したソロホールツアーとは比べようもない小規模な会場だったが、その選択には、ある狙いと一つの気持ちがあった。 「バンド時代、私はライブハウスを全然埋められませんでした。もう一度スタートするには、あのころかなえられなかったことを少しずつ形にしていこうと思って。満員の会場を見たときはホッとしましたね」
一方で、グループ時代には感じたことがなかった、「重み」ものしかかってきた。 「一人になって、どんな音楽を作ればより多くの方に聴いてもらえるのか? ビジネス的に食べていけるのか? 会場の規模、CDや配信の記録などの数字の重みだって今まで以上に感じます……もうとにかく、さまざまなことが怖かった」 なかでも「“元アイドル”だから」という「目線」は山本を大いに悩ませた。 「今まで“アイドル”として応援してくださった方が、これからも応援してくださるのか? アイドルという肩書がなくなった自分には、どういう価値があるのか? いろいろ考えました。特に元NMB48というだけでお遊び半分でやっている、みたいな見方をされるのがつらくて。むしろあの時間があったからこそ今の私がいるわけです。この葛藤とは、長い付き合いになっていくなぁと思っています」
理想とギャップがあっても諦められない、それが音楽だった
今年12月、卒業後1年の活動の集大成である、サードアルバム『α』が完成した。「最初」「未知数」の意味を持つタイトルを冠した今作では、山本が全楽曲の作詞・作曲を手がけている。さらに、椎名林檎の編曲やスピッツのプロデュースで知られる亀田誠治、Mr.Childrenのプロデュースで知られる小林武史など、豪華かつ多彩なプロデューサー陣も迎えた。 「まだシンガー・ソングライターとして、クリエーターとして知識も経験もないので、さまざまな音に挑戦し“自分の個”の幅を広げて高めることが、今自分を一番成長させることだと思ったんです」 今作で彼女が思い描く“自分の個”の音は見えたのだろうか。 「どの曲を歌っても、自分“ぽさ”が良い意味で出ているなぁと気づきました。私、音に関してはアレもしたい!コレもしたい!という優柔不断な人間で(苦笑)。それは良い意味で捉えるなら“柔軟性”があることなのかなと。その柔軟性からにじんでくる“私の歌”が、今のところの私の“個”かな」