オードリー・ヌナ、韓国系アメリカ人のR&B新鋭が語る「奇妙な実験性」と「人生の二重性」
米ニュージャージー州出身、韓国系アメリカ人R&Bアーティスト/シンガーソングライターのオードリー・ヌナ(AUDREY NUNA)が、待望の2ndアルバム『TRENCH』をリリースした。R&Bの大ヒット曲をサンプリングした先行曲「Mine」でも話題の彼女が、最新作で追求した「たくさんの新しいこと」について語る。 【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高の500曲」 オードリー・ヌナは二重性について、そして正反対のふたつの感情や気持ちが同時に存在し得ることについてずっと考えてきた。彼女はローリングストーン誌の独占インタビューにて、アルバム『TRENCH』はそうした考えをひとつの発端にして生まれたと語る。また、彼女の芸術性のダークで冷たい側面を示す新曲「Mine」も先日公開された。この「Mine」では、ブランディとモニカの 「The Boy is Mine」がさらりと引用され、ロボティックと言えるほどクラブ向けの強力な曲に仕上がっている。 「(『TRENCH』というタイトルは)このアルバムが成長痛とたくさんの相反する感情のタペストリーだという事実をあらわしていると思います」と、この韓国系アメリカ人ミュージシャンは語る。「私が何度も立ち返った問いは、『どうすれば人間らしくいられるのか? どうすれば自分を取り巻く世界の激動と厳しい現実を知りながら穏やかさを保てるのか?』です」。 このアルバム全体を通して、ヌナは彼女の叙情性とボーカル、そして切れ味のいいラップと怒涛のビートを際立たせる曲の数々を横断するバイオニック・ヒーローを体現してみせる彼女はこのアルバムを「ハード・スキン」と「ソフト・フィーリング」の2部に分けている。前半は、「身の回りで起こっていることについての、ほんの少しだけよりロマンチックな問いかけ」を伴う新たな始まりを意味し、後半は、このアルバムの「変化を経て、自分が見てしまったものを見ないふりをすることはできないことに気づく」性格を反映していると彼女は言う。 ヌナはこのアルバムを、ジャック・ハーロウとのコラボレーションを含むデビュー・アルバム『a liquid breakfast』からの明確な「進化」だと考えており、暖かい春のようだった前作に対し、今作は冬のような感じだと語っている。「『TRENCH』は、もっとダークで、夜が舞台で、もっと寒いパラレルワールド。『TRENCH』にはより多くのフラストレーションや怒りが織り込まれています」と彼女は言う。「これらはすごく違っているけれど、平行して存在しているんです」。 ヌナは曲作りのために、「基本に戻る」ため荷物をまとめて親しいコラボレーターたちと一緒に砂漠に向かった。新しいコラボレーターたちと曲作りのセッションを試みたが、すぐにそれは自分には――少なくともこのプロジェクトには向かないと気づいた。曲作りのプロセスは最終的に「探索」のように感じられたと彼女は言う。 「私たちは親密で安全な空間を作り、厳格なアジェンダを掲げるのとは反対に、自然に何かが起こるようにしました。そこには大きな違いがありました」とヌナは言う。「曲が生まれてくるのに任せました。そのためのスペースを作ることが第一歩なんです……それぞれのヴァースに時間をかけました」。 このプロジェクトでは、新しいサウンド、より辛辣なリリックのスタイル、そして以前よりずっと大きな怒りなど、「たくさんの新しいこと」に挑戦したので、ファンが広い心で受け入れてくれることを望んでいると彼女は語る。「自分にとって本当にカタルシスがありました」とヌナは言う。「奇妙で実験的な曲もあるけれど、このアルバムが『わかってもらえた』みたいな感覚をあなたにもたらすことができたら嬉しいです」。 --- オードリー・ヌナ 『TRENCH』 発売中
TOMAS MIER