「愛の中で逝かせて」21歳の娘は安楽死を選んだ 受け入れた母の思い 世界で初めて合法化したオランダ、21年たってどうなった
日本では「安楽死を認めると、財政的な制約や優生思想から高齢者、障害者に対し『安楽死したほうがいい』という空気が広がりかねない」として、反対論が根強い。オランダではそうした意見はないのだろうか。 在住約50年でオランダの安楽死事情に関する著書もあるシャボットあかねさん(75)に聞くと、「ほとんどない」という。そもそも「自発的な要請」が条件で、本人が「生きたい」と思っているのなら、その希望を尊重すべきだという社会的な合意があるようだ。「『安楽死を迫られる』という心配は、オランダではないと言っていい」とシャボットさん。 日本について聞くと、「『安楽死』という表現は主観的過ぎるので、『本人の意思に基づく生命の終結』などと中立的な表現にした方がいい」と指摘。その上で「まず、患者の自己決定権を認める『患者の権利法』を定めるべきだ。家族や医師ともっと対話の時間を持つことも必要。法制化などの議論はそれからでしょう」と話した。
▽取材後記 「自分が生きたいように生きたい」と思うのと同様、「死にたいように死にたい」と思うのは自然な感情ともいえる。日本ではその権利が認められていない。 一方で、オランダの安楽死は徹底的に「本人の選択」だ。家族や周りがどう思うかは関係なく、本人が「生きたい」と言えばそれを尊重する。 「死ぬ権利」を認めるには、「生きる権利」が守られていることが大前提だ。日本で安楽死の議論に多くの人が危うさを感じるのは、その点が欠けているからだろう。 ********* 【オランダ王国】 面積は九州よりやや大きい程度で、人口約1800万人。首都アムステルダム。国土の4分の1以上が海抜0メートル以下で、風車とチューリップのイメージで知られる。大麻と売春も事実上、合法化している。