「愛の中で逝かせて」21歳の娘は安楽死を選んだ 受け入れた母の思い 世界で初めて合法化したオランダ、21年たってどうなった
親として喪失感は当然ある。ビアンカさんは2022年、同じように精神疾患の子どもが安楽死した人と一緒に親の会を設立。団体名は直訳すると「愛の中で逝かせること」だ。 ▽本人の自発的な要請など六つの要件 精神疾患、そして若者でも安楽死が認められることがあるというのは、日本人にとってはかなりショッキングだ。精神疾患ゆえに死を希望することはあるし、それで若い人の命を絶っていいのかという思いはぬぐえない。どのような制度設計になっているのだろうか。 2002年に施行されたオランダの法律は「要請に基づく人生の終結と自殺ほう助(審査手続き)法」。一定の要件を満たした場合、医師が患者を死に導いても罰せられないことになっている。 安楽死の方法は二つあり、一つは医師が患者に致死薬を注射する。もう一つは医師が薬を渡し、患者が自ら服用する方法(自殺ほう助)だ。 要件は次の6項目で、全てを満たす必要がある。
・本人から自発的で熟慮された要請があること ・耐えがたい苦痛があり、良くなる見通しがないこと ・医師が患者の状況や予後について十分な情報を提供すること ・ほかに合理的な解決策がないこと ・担当医とは別に、1人以上の独立した立場の医師が審査すること ・正当な医療的方法で注意深く行われること ▽毎年、報告書が公表される 意外だが「死期が迫っていること」は要件ではない。 一方、よく言われることが「『死にたい』と希望しても、そう簡単には認められない」ということだ。オランダでは日本と異なり「家庭医」が医療制度に根付いていて、安楽死を実施するのもほとんどが家庭医。患者や家族と長年の付き合いがあり、最期の迎え方について話し合う文化がある。安楽死も十分な対話を経て実施される。 検証の仕組みと透明性が確保されているのも特徴だ。安楽死が行われると、問題がなかったかどうか審査委員会がチェック。統計データや個別ケースを盛り込んだ報告書が年1回公表される。