「愛の中で逝かせて」21歳の娘は安楽死を選んだ 受け入れた母の思い 世界で初めて合法化したオランダ、21年たってどうなった
▽20人に1人が安楽死。認知症でも では、実際に安楽死する人はどれぐらいいるのか。報告書によると、2022年は8720人。これは年間の全死者数の5.1%、つまり約20人に1人に当たる。 安楽死する人の数は年々増えていて、特に22年は前年比13.7%増と、これまでに比べて増加幅も大きかった。 報告書は疾患別や年代別などの内訳も載せている。22年に疾患で最も多かったのはがんで58%。ほかは複合的な疾患、神経疾患などが続くが、認知症も288人、精神疾患も115人いた。 年代別では、60歳超が89%を占めるが、30歳以下も28人いる。これは、12歳以上であれば法律で安楽死が認められているからだ(16歳未満は親の同意が必要)。 ▽12歳未満にも拡大される さらに12歳未満の子どもにも安楽死を認めようと、オランダ政府は今年4月、対象を拡大する方針を発表した。耐えがたい苦痛があり、緩和ケアでも和らげられず、命が助かる見込みがないケースが対象で、2024年にも施行される可能性がある。なお、隣国ベルギーでは2014年から全ての未成年に安楽死を認めている。
実はオランダでも1歳未満の子どもに関しては、既に安楽死が認められている。対象年齢の拡大について、安楽死を支持・啓発する団体「NVVE」の法律カウンセラー、イベット・シュロウトさんはこう説明する。 「1歳から12歳未満は制度の空白期間になっていて、いくら苦しんでいても、断食するか12歳になるまで待つしかなく、解決策が必要だった」 子どものため本人の要請に基づくわけではないので、法的には安楽死ではない。1歳未満に適用される別の仕組みを12歳まで広げる形が想定されているという。 ▽「患者の権利を認め、対話が必要」 オランダでは安楽死が社会でほぼ定着したといってよいが、少数ながら反対する人もいる。キリスト教の患者団体「NPV」がその中心だ。 NPVの政策アドバイザー、イボナ・ホウシュバン・ホーシャンさんはこう訴える。「安楽死を選ばなくて済むよう、精神面を含めてもっと緩和ケアに力を入れるべきだ。安楽死する人の増加は、社会がインクルーシブ(包摂的)でないことを示している」