「平和前の逆説」…ICBM登場のウクライナ戦争、なぜさらに激化するのか
ロシアがウクライナに大陸間弾道ミサイル(ICBM)まで動員した空爆を行ったことが判明し、1000日を超えたウクライナ戦争が一歩先も見えない局面に突入している。 ■「ロシアがICBM発射」 21日のロシアの空爆は、ウクライナ空軍が「ICBMが発射された」と発表したことで強い関心を集めた。ICBMは主に核弾頭を搭載し遠距離にある目標を攻撃するときに使用される。実戦で使われた前例はない。AP通信は「事実であればロシアの核能力を想起させ、危機を高めようとする強力なメッセージだとみられる」と報じた。 ウクライナ空軍は、ICBMとともにロシアが発射したという巡航ミサイル(クルーズミサイル)Kh-101の7発中6発を撃墜したという事実のみ公表した。あわせて「残りのミサイルは特段深刻な被害を与えなかった」と明らかにするだけで、ICBMの種類や被害の有無などについては具体的に明らかにしなかった。 ポーランドの国防専門メディア「ディフェンス24」は「ICBMは一般的には核弾頭を搭載するが、今回は通常弾頭が使われた」として、「このミサイルは、ICBMの標準射程距離よりはるかに短い約1000キロメートルを飛行した」と明らかにした。ウクライナの報道機関「ウクライナ・プラウダ」は匿名の情報を引用し、「RS-26ルベーシュ(Rubezh)が使用されたとみられる」と報じた。RS-26は固体燃料を使用するICBMで、800キログラムの核弾頭を搭載し、5800キロメートル離れた場所まで攻撃できる。しかし、試験発射時に2000キロメートル前後の目標物を攻撃したケースもあり、中距離弾道ミサイルと誤解されることもある。米国ABC放送は匿名の官僚の話を引用し、「ICBMではなく弾道ミサイル」と報じた。 これに先立ち20日、ウクライナも英国の長距離ミサイルでロシア本土を連日攻撃した。前日に米国が提供した長距離ミサイルのATACMSでロシア本土を攻撃したのに続き、翌日の追加攻撃だった。 ニューヨーク・タイムズは英国が支援した射程距離約250キロメートルの巡航ミサイル「ストームシャドー」も数発がロシア南西部のクルスク州に着弾したと、米国防総省とウクライナ当局者の話を引用して報じた。複数のロシア軍事ブロガーも、ウクライナ軍がクルスクに最大12発のストームシャドーを発射し、一部の破片がクルスク州のマリノ村の軍指揮本部と推定される目標を攻撃したと主張した。ウクライナメディアはこの目標が北朝鮮軍とロシア軍の将校が使う施設とみていると報じた。 長距離ミサイルの使用制限を急遽解除したバイデン政権は、2億7500万ドル(約420億円)規模の追加の軍事援助の計画も発表した。アントニー・ブリンケン国務長官はこの日、ウクライナに高機動ロケット砲システム(HIMARS)用の弾薬などを追加で提供することを明らかにした。今回の支援物資には、米国のジョー・バイデン大統領が使用禁止宣言を破って提供すると報じられた対人地雷も含まれている。 ■トランプ氏当選後に揺れ動く戦況 「就任24時間以内に戦争を終わらせる」というドナルド・トランプ前大統領が、6日に米大統領選で勝利を確定した後、ウクライナの戦況は揺れ動いている。発端は1万人を超える北朝鮮兵の投入だ。この状況を放置すれば、ウクライナ軍が8月に占領したロシア領土のクルスク州から押し出される可能性があり、トランプ政権発足後に始まるとみられる休戦交渉において、ウクライナはきわめて不利な立場に置かれることになる。 バイデン大統領は、休戦交渉の開始前にウクライナの状況を最大限改善することに集中するのを選んだとみられる。ウクライナがクルスク地域の一部を維持できるならば、この地域をロシアが占領したウクライナ東部領土の大部分と対等に交換する試みが可能になるためだ。 有利な立場で休戦交渉を開始しなければならないのは、ロシアも同じだ。ロシアは最近、兵士数千人を失いながらも、東部ウクライナの領土をより多く占領するために、さらに前進した。 ニューヨーク・タイムズは「平和が間近に迫ってくると、双方がより有利な条件を得ようとして、戦いがさらに激化するという逆説的な状況」だとし、「このような緊迫した戦争の局面は、数カ月以内に終結する可能性もある」と見通しを示した。 キム・ウォンチョル記者、ベルリン/チャン・イェジ特派員、ワシントン/イ・ボニョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )