「老化は病気」とされ「年だから」が通じない時代に【2025年の医療を予想する】
【2025年の医療を予想する】#1 2025年の日本の医療について、いま見えている範囲で予想してみましょう。いくつか大きな流れがありますが、なかでも「老化を病気としてとらえる」という動きが活発になってくるはずです。いままでの常識は「老化は病気の原因」だったのですが、老化そのものを病気と捉えることで、老化の予防や治療が可能になるという発想が、世界中で急速に広まっています。 人気医師の和田秀樹がズバリ教える「老化を遅らせる生活」 その動きは、医学界から次々と提案される新しい病名(疾病概念)にも表れています。「COPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)」「CKD(慢性腎臓病)」「CHF(慢性心不全)」「CLD(慢性肝臓病)」「アイフレイル」「ヒアリングフレイル」「ロコモティブシンドローム」などです。 ちょっと分かりにくいですが、各臓器が慢性的に弱ってくる状態を指していると思えばいいでしょう。もちろん、もっと細かい病名に分類できます。たとえばCKDには、高血圧性腎症、糖尿病性腎症、慢性腎炎などが含まれます。それらは異なる病気ですが、症状や治療法がほぼ共通していることから、まとめてCKDと呼ぼうというわけです。 他も同様です。ロコモティブシンドロームには、変形性ひざ関節症や脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、椎間板ヘルニアなどが含まれますし、CHFには弁膜症、不整脈、心筋症、急性心筋梗塞の後遺症などが入ります。 それらの病気の原因は、喫煙、飲酒、運動不足、肥満、ストレスなど様々です。しかし突き詰めれば、いずれも「老化現象」です。年をとれば、内臓も筋肉も弱ってくるのは仕方がないことです。従来の医療では、不具合が出れば対症療法を施すだけでした。老化が原因だから、根本的な治療法はありません。 しかしそれを「仕方がない」と諦めないのが新しい医療です。どの慢性疾患も、早期に発見し、生活習慣を改め、適切な治療を施せば、悪化を防ぎ、ちょっと大げさに言えば“新品同様”に戻すこともできるはず、と考えるわけです。このところ、これらの慢性疾患への注意喚起を促す広告やCMが急に増えてきたのにお気づきの方も多いでしょう。背景にはこうした動きがあるのです。 のんびりと老化に身を委ねることが許されない時代が、すぐそこまで迫っているのです。若者は言うに及ばず、中高年世代も「歳だから」などと言ってられません。それが人生100年時代を迎えるということです。 (永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)