「虎に翼」松山ケンイチが“ラスボス説”の根拠。モデルになった史実の人物は「大掛かりな弾圧」も
社会派作品なのに硬派一辺倒ではない
桂場の考え方とも一致する。桂場は貴族院議員・水沼淳三郎(森次晃嗣)のデッチ上げだった「共亜事件」で、水沼の意に沿わぬ判決を出したため、長く冷や飯を食わされた。以降、政治家を嫌うようになった。 穂高が亡くなった直後の第70回には「司法の独立を守る! もう2度と権力好きのジジイたちに好きなようにはさせない!」(第70回)と、竹もとで雄叫びを上げた。 原爆裁判中だった第115回には政治家に裁判を終わらせるよう圧力をかけられていると寅子に伝えた。不快そうだった。第118回で政権与党・政民党が「裁判制度に関する調査特別委員会」を設置し、裁判への介入を図ろうとすると、また怒りを露わにした。 桂場も政治家を排除するため、リベラル勢力の弾圧に向かうのだろう。おかしな理屈だが、それが史実である。 『虎に翼』は社会派色の強い朝ドラだった。過去、原爆裁判、東大安田講堂事件(1969年)を扱った作品はない。ニュース映像をふんだんに使ったのも異例。70代になっている学生運動世代は懐かしかったのではないか。 それでいて硬い作品ではなく、一級のエンターテインメントに仕上げられた。最後まで目が離せない構成になっているところも立派である。 <文/高堀冬彦> 【高堀冬彦】 放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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