看板政策・防災庁の準備室、組閣1か月で発足…石破カラー前面に首相周辺「期待感取り戻す」
石破内閣は1日で発足1か月を迎えた。持論と現実路線との間でバランスを取ることに苦しんでおり、政権運営を安定させられずにいる。衆院選大敗で少数与党に陥り、野党の介入が避けられなくなる中、「石破カラー」の政策の実現を支持につなげていけるかが課題となる。
石破首相は1日夜、首相官邸で記者団からこの1か月についての感想を聞かれ、「息つく暇もない1か月だった」と振り返った。その上で、今後の取り組みについて「丁寧に、謙虚に、国家に責任を持った政権運営をしていきたい」と語った。
首相は就任直後から、最大の関門とされた衆院選を見据え、9月の自民党総裁選で訴えた主張を封じた。衆院解散前に臨時国会で予算委員会を開く考えを示していたが、総裁選の盛り上がりを選挙戦に生かすため、野党側の予算委開催要求に応じなかった。
衆院解散直後の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議で外交デビューしたが、アジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設や日米地位協定の改定は、各国との会談で触れなかった。首相としての責任を背負い、現実的な対応を決断した格好だが、野党からは「変節」と批判され、「石破氏らしさが失われた」との声も出た。
今後は看板政策の実現に力を注ぐ考えだ。首相は1日、肝いりの「防災庁」新設に向け、内閣官房に「設置準備室」を発足させた。地方創生を推進する「新しい地方経済・生活環境創生本部」や自衛官の処遇改善閣僚会議も設け、政策の具体化を急ぐ。
ただ、国会では少数与党に陥り、国民民主党など野党の政策要求を受け入れざるを得なくなった。政府高官は「官邸は言われた政策をこなす下請け機関になりかねない」と危惧する。
読売新聞社の衆院選の結果を受けて実施した緊急全国世論調査では、首相辞任を求める声は、辞任を不要とする声を大きく下回った。首相周辺は「野党の要求でも必要なら取り入れ、国民生活を向上させる政策実現を重ねることで、期待感を取り戻したい」と語る。