未婚、死別、離婚…おひとり様の女性3人が将来を語り合う「健康・お金・孤独が不安。自分の老いへのリアルな備えを」稲垣えみ子×吉永みち子×小谷みどり
◆長生き時代、高齢シングルが増える 小谷 2020年の生涯未婚率を見ると、50歳時点で結婚していない女性は約18%。ここには離婚してひとりになったバツイチや、私のように配偶者を亡くした《没イチ》は含まれないので、シングルで一生を終える女性の数はもっと多い。90歳を超えて生きる確率は男性が4人に1人、女性は2人に1人以上です。 吉永 長寿時代、しかも男性より長生き傾向の女性は、最終ステージでシングルになるケースが多くなりますよね。 稲垣 そもそも私は雑誌で「おひとり様企画」が人気と聞いても、どうも解せなくて(笑)。ひとりでも家族といても、人が生きていくうえでの不安って変わらないのではないでしょうか。 吉永 理由はいろいろあれど、ひとりになって迎える老いをうまく想像できないからかもね。 小谷 老後の不安には「健康とお金と孤独」の3つがあると言われています。とくに専業主婦は年金も少ないし、夫が亡くなると老後は経済的に困窮するのでは、という心配もありますね。 吉永 不安は、漠たるままで放っておくと際限なく膨らんでいく。《おんぶお化け》みたいに背中に引っついてくるから、その正体が何なのか、客観的に突き詰めたほうがいいと思うのよ。 小谷 先日ある講演会の質問コーナーで、「死ぬのが不安ですが、どうしたら解消できるでしょう」と聞かれました。人間いずれ絶対死ぬんだから、そこは諦めるしかないですよね。 じゃあ、不安の原因は何か。「死後はどうなる」といった哲学的なことを考えたいのか。それとも「散らかった家を家族に片づけさせたくない」といった、実務的なことが心配なのか。そこからまず整理しましょう、とそのときはお答えしました。
稲垣 豊かさのなかで、自分にとって本当に大事なものが見えにくくなっている時代なのかもしれないですね。「あれもこれもないと不安」ばかりで、「これさえあれば大丈夫」がどこかへ行っちゃってる。 小谷 どう生きて死ぬか、という本質的な問いについて考える機会が少ないのかもしれないですね。子どもの頃、「将来何になりたいか」と聞かれることは多かったけれど、「残りの人生、何をしたいか」と質問される経験はほとんどありませんから。 吉永 老いていずれ死ぬということだけは確実で、いつ死ぬかはわからないしね。 稲垣 母が亡くなる3年前に認知症になったこともあって、私は、長生きするということはいずれ認知症になるということだと思うようになりました。 私はガス契約をしていないので銭湯に通っていますが、そこには認知症の方も利用している光景があって、皆がそれぞれ気にかけたり声をかけあったりしている。そんな経験の積み重ねが、自分の老いへのリアルな備えにつながっていくと思っているんです。 吉永 自助はしつつ、共助もしやすい社会が望ましいですね。私も衰えや病は避けられない、と実感中。