海上の漁師を守る「命の地図」 ── 南海トラフ地震に備え、南伊勢町が作成
漁師たちの要望も取り入れて「命の地図」作成へ
2015年度中の完成を目指して作成が進む、南伊勢町海上避難マップ。完成イメージ図には、最寄りの漁港と訓練時に設定した水深70mまでの所要時間が、色分けにより2分刻みで示される。真っ先に目に飛び込んでくる赤線は、ここより南側(海側)は陸上避難では間に合わないと想定される「沖出しの境界線」だ。 この完成イメージマップも示された報告会では、漁業者側から「“沖出しの境界線”をもう少し広くとってもらえないか」という要望があがった。絶対に沖出しをしては助からない場所、そして陸上避難が間に合わない場所については明快に示された。 一方で、沖出しをするか港へ戻るかの判断を分けるこの赤線は、つまり沖へ出るにしても港に戻るにしてもリスクが高いことを示すギリギリのデッドラインともいえる。線ではなく面で示すことで、「今、自分は危険なゾーンにいる」という意識を持つこと。たしかに緊急時のとっさの判断に大いに生きるはずだ。 漁業者の命を守ることはもちろん第一義とされるべきだ。しかし漁船の沖出し問題は、命はもちろん漁民の財産である漁船を守れるかどうかを左右するきわめて重要かつデリケートな問題であり、行政側も積極的に関与しづらいという事情もある。しかし、「南海トラフ巨大地震」を例に挙げるまでもなく、今後も確実に津波が起こる地域は日本列島にはいくつも存在する。 「沖出しの是非は簡単に問えるものではなく、原則、船長に判断してもらうしかない。ただ、その際の判断材料を用意するのは私たちの務め。」と南伊勢町役場の瀬古さん。具体的なデータを示すことで、確実に救える命がある。漁師たちと町を自身らの手で守る方法が示された、新しい海上避難マップの完成が待たれる。 (エディマート・大塚亜依)