プロ野球で安打製造機はもはや死語か 投高打低時代の到来で4割打者誕生は見果てぬ夢になる?3割打者もめっきり減少
安打製造機という言葉は、もはや死語か。投高打低時代の到来でも日本球界で4割打者誕生は、見果てぬ夢に終わるかもしれない。 【写真】セ・リーグで打率首位に躍り出た巨人のベテラン選手 ここ数年、日本球界では3割打者の数がめっきりと減少している。5月6日終了時点でセ・リーグは・3021で首位に躍り出た巨人の丸佳浩(35)とヤクルトのドミンゴ・サンタナ(31)の2選手だけ。パ・リーグでも・347の高打率を誇る日本ハム・田宮裕涼(23)とソフトバンクの近藤健介(30)以外は、規定打席に到達した選手で3割を超えている人間はいない。 昨季もセ・リーグでは・326で首位打者に輝いたDeNAの宮崎敏郎(35)以下、3割打者はわずか3人のみ。パ・リーグに至ってはオリックスの頓宮とソフトバンクの近藤の2選手だけだったことを思うと寂しい限りである。 長いことプロ野球に取材に関わってきた。最近では比べものにならない高打率を残し、安打製造機と呼ばれた選手たちの打撃を目の当たりにしてきた。1986年のシーズンで打率・389を残した阪神のランディ・バース氏(70)や2度の3割8分超えを記録しているイチロー氏(50)もそうだったが、1989年のウオーレン・クロマティ氏(70)は規定打席に到達した時点では打率4割を超えていた。当時は「日本でもついに4割打者が誕生する」と固唾(かたず)をのんで見守っていたものである。 ところが、絶対に減らない本塁打や打点とは違って、打率は1本の安打で上下する。当時の巨人が優勝争いから脱落したチームなら、個人記録を優先したかもしれない。ところが、優勝争いを演じていたこともあり、クロマティ氏が試合を休むことはなかった。結局は試合の出場し続けたことで・378に終わり、この夢の数字を逃している。 1試合で回ってくる打席は一番的の3・6回強といわれている。シーズンを通じて4割に到達するためには1試合平均で1・45強の安打が求められる計算で、このノルマをクリアするのは確かにハードだ。野球の本場であるメジャーリーグでも近代野球に限っては、20世紀初の三冠王であるアスレチックスの故ナップ・ラジョイ氏が1901年に残した・426を最高に、1941年に故テッド・ウイリアムズ氏が4割打者となった以降、ひとりの達成者もいない。 確かに以前とは違って投手が投げる球種が豊富になり、さまざまなトレーニングやデータを駆使することによって球速やボールの回転数は明らかにましている面はある。だが、それらのデータを手に入れることは、打者の立場でできる。単純にこのまま投高打低時代が続くとは思いたくはない。 本塁打は打撃の華という人もいるが、試合を左右する1本1本の安打にも価値があり、ドラマがある。かつては、原稿に書く際に安打を量産する選手のバットを「打ち出の小づち」などと表現したこともあった。もはやそんな表現も時代に埋没していく運命なのだろうか。(デイリースポーツ・今野良彦)