放送作家・町田裕章氏、芸人バラエティと同じスタンスで臨む“坂道3番組” 他番組での抜てきにも尽力「適材適所に」
■テレビ局には日本有数の優秀な人材がいる ――30年近くテレビのお仕事をされていて、メディアの環境が大きく変わった中で、放送作家さんのお仕事の変化というのはいかがですか? 僕自身はそんなに変わってないです。基本的には昔からの仕事相手と変わらずやってるだけですし、あちこち仕事を広げるタイプでもないので。 ただ、最近はフリーのディレクターから「企画会議をしたい」と言われると「どこに出すのですか?」と聞くことは多くなりました。従来のテレビ局だけじゃなくて、「Leminoです」とか「Spotifyです」みたいな感じで新たなプラットフォームが増えて多様化している感じはします。けど、面白い案を出し合う0から1の根底のところは、メディアが変わっても特に変わらないんじゃないかなと思いますけどね。 ――昔だと世帯視聴率だけだった評価指標が、先ほども出たTVerの再生数やコア視聴率などいろいろ増えてきたのは、やりやすいのでしょうか、それとも難しいのでしょうか。 やりにくいですよ(笑)。TVer再生数が大事な番組もあれば、個人視聴率が大事な番組もあるし。上が変わると指標が変わることもあったり。さっさと評価指標を一本化してもらわないと現場は右往左往するだけですよ。早く偉い人に決めてもらいたいです。 ――そういう現場にあって動画配信が勢いを増す中で、テレビの役割というのはどのように考えていますか? まず「テレビ」をコンテンツとフォーマットと分けて考える必要があって、はっきり言って家のテレビで決まった時間に番組を観るというフォーマットが古くなっているのは否めないですよね。テレビがオワコンとか言われているのはフォーマットのことですよね。一方で、コンテンツは断然に進化していると思うし、視聴者にとって観やすい環境さえ整ってくれればテレビコンテンツはめちゃくちゃ強いですよ。最近TVerの広告収入も上がってきていると聞くし、これは良い傾向ですよね。 ――長年積み重ねたノウハウもありますし。 なんだかんだテレビの人って優秀ですよ。奇跡のような瞬間を何度も見てきましたから。あと僕がシンプルに思うのが、僕ら世代が学生の時って、大学生が就職したい企業ランキングにテレビ局が何社も入ってたじゃないですか。ということは日本有数の優秀な人材がテレビ局にいるってことですよね。その人材が社内で偉くなった時には一気に変わるんじゃないかなと密かに期待しています。 ――いろんなプラットフォームが増えたという話もありましたが、コンテンツの強さで言うと結局作ってるのはテレビ出身の人だったりしますからね。 そうそう。『KILLAH KUTS』(TBS藤井健太郎氏)にしろ『あいの里』(元フジテレビ西山仁紫氏)にしろ、めちゃくちゃ面白いですけど作っているのはテレビ局の人ですもんね。ただ、プラットフォームの数が増えすぎて、面白い番組が見つけにくくなっているというのはあると思います。 僕、最近ちょっと注目しているのが、ちきりんさんっていう有名ブロガーがVoicyというメディアの中で、自分が見た面白かったテレビ番組をセレクトして、その情報を販売しているんですけど非常に面白い取り組みだなと。これだけ膨大なコンテンツがあふれているとキュレーターの存在価値が高まってくるのも分かります。それこそマイナビニュースさんでもいいですし然るべき人が、面白い番組をセレクトして視聴者に届けるという流通経路ができれば、さらにテレビコンテンツの価値は上がると思います。