秋田の夏の終わりを告げる風物詩 高橋優、主催フェス『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』オフィシャルレポート
高橋優が主催する地元密着型フェス『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』(以下、ACMF)が今年も開催された。秋田県内にある13の市を巡るキャラバン型フェスであるACMF、今回は能代市・二ツ井中央公園に設けられた特設ステージを会場に、2日間で約1万6千人(主催者発表)の観客が訪れた。ライブアクトはもちろん、開場中BGMで流れる秋田民謡や県出身著名人のコメント、もちろんフードエリアなども含めて深い秋田愛を随所に感じられるものとなっていた。秋田の夏の終わりを告げる風物詩となっている7回目のACMF、2日間のライブレポートをお届けする。 【全ての画像】『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』ライブ写真(全25枚)
■DAY1 9月21日(土)
ステージの名称にも秋田の息吹が感じられる。秋田県の南北に位置する山脈の名前を冠した白神STAGEと鳥海STAGEだ。前者ではアーティストによるライブが、後者ではお笑い芸人によるショーが繰り広げられるのが特徴だ。 また、「+A(ction)」として、リユースカップの利用やごみの分別などSDGsに配慮した取り組みも積極的に行なっている。 齋藤滋宣・能代市長の開会宣言が行われたオープニング・セレモニーでは、赤いハッピを着た高橋優がバスケットボールをドリブルしながら登場。そう、能代といえば圧倒的な強さで一時代を築いた能代工業高校(現:能代科学技術高等学校)のバスケットボール部が有名だ。そしてバンドとともに前回から恒例となっている、このフェスのテーマソング「秋田の行事」のパフォーマンスで今年のACMFが幕を開けた。 バイクの爆音とともに千葉県木更津から国道を北上してやって来たのは氣志團。「俺達には土曜日しかない」でオーディエンスの共感を呼び、「房総魂」で一気に駆け抜ける。氣志團が歌う“街”や“仲間”は、オーディエンス一人ひとりの心に浮かぶそれらだ。「ACMFずっと出たかったよ。優くんありがとう」と綾小路翔が感謝を伝える。『氣志團万博』を継続して開催している氣志團だからこその気持ちのこもった言葉だ。と次の瞬間、ステージには巨大なQRコードが入場。ライブ中も氣志團万博のチケット購入手続きが可能というお茶目すぎる仕掛けがなんとも氣志團らしい。後半は、「落陽」「One Night Carnival」でピリオドの向こうへオーディエンスをいざなった。 キンタロー。が繰り広げる、かなりエクストリームなモノマネは、アイドルからアニメキャラクターまで3次元も2次元も、ついでにコンプライアンスの壁も関係なく超えていく。ついにはモノマネ四天王のセンター、コロッケのモノマネをするという誰も思いつかなかった荒技に出る。そしてアンジェリーナ・ジョリー meets ナマハゲで全秋田を驚かせた。 ブルーのアメフトジャージに身を包んだAIがステージに登場すると、キーボードの伴奏とボーカルというシンプルなスタイルで「ハピネス」を披露。「I Wanna Know」では4名のパフォーマーが参加し、さらに以降はDJの繰り出すビートも駆使しながらパフォーマンスに厚みを増していく。「Story」と「アルデバラン」という珠玉のバラードをシンプルな編成で聴けたのはACMFに駆けつけたオーディエンスへの最高のプレゼントとなった。ラストは「ワレバ」「WORLD DANCE」と、ダンスビートに乗せてフリーキーに会場を盛り上げた。エンディングでかかった「ハピネス」に合わせて、〈秋田が笑えば〉と歌詞を変えて歌ったのが、高橋優のACMFへの想いに呼応したコール&レスポンスのように響いた。 ラパルフェは都留のモノマネネタを中心に披露。「トイストーリー」のウッディにいろんな人の声を搭載という設定で、阿部寛、大泉洋などが再生されていく。的確に入る尾身のツッコミがいいリズムを刻む。「2億4千万の瞳」に乗せて、マニアックなお笑い芸人モノマネを経由して、阿部寛へと帰っていく壮大な輪を描きつつ、さらなる混沌へ突き進んでステージを終えた。 オーディエンスのクラップに迎えられてステージに登場したのは、秋田での初ライブとなったSaucy Dog。「BLUE」「シンデレラボーイ」と確実にリスナーの中に溶け込んでいるメロディが解放されていくような一体感は圧巻だ。ドラムのせとゆいかが高橋優の音楽に衝撃を受けたというMCに続いて、8月2日にリリースした新曲「馬鹿みたい」を披露した。中盤3曲では、彼ららしい真っ直ぐな信念に満ちたメッセージで一気に畳み掛けると会場の集中度がぐっと上がる。雨の影響もあり気温15度を下回る中でのライブ。「みんなの心があったかくなるライブになれればいいなと思います」と石原慎也(vo / g)が言って「怪物たちよ」「優しさに溢れた世界で」をパフォーマンス。オーディエンスの笑顔にあふれた素晴らしいステージだった。 ブリーフ1枚が宿命づけられた男、とにかく明るい安村の第一声は「寒い!」だった。四つ打ちのリズムに合わせて、ネタを披露していく。「アイム・ウェアリング」と安村が言えば、オーディエンスが「パンツ!」と返す。お客さんのリクエストに応えて披露した、高橋“全裸”優のポーズはぜひとも秋田の無形文化財として受け継いで行ってほしい。 高橋優が1曲目に選んだのは「雪月風花」。昨年のACMFの最後にリリース情報が発表された曲だ。まるで前回からの続きをやっているような錯覚になる。そこにはきっと、1年間毎日をきちんと繋いできたオーディエンスへの想いが込められているのだろう。その次が「虹」。2曲目で、もうほとんどクライマックスみたいな盛り上がりを見せる。だからやっぱりACMFはずっと続いているのだ。「初めての雨でのACMFを経験させてもらいました。今日ここまで残ってくれたみんなが一番偉大でカッコいいです」。「はなうた」を弾き語りで披露した後、リズムに乗せて「秋田の底力見せてもらっていいですか?」とオーディエンスを煽ると、「現実という名の怪物と戦う者たち」「象」「こどものうた」とアップテンポ、かつ、アグレッシブな曲を連続でパフォーマンス。「素晴らしい出演者の皆さんが秋田に来てくれて本当に誇らしいなと思います。最高だったでしょ? 1個だけでも、何か良かったなっていうものを持って帰ってくれたらうれしいです」。最後は、9月11日に配信リリースした最新シングル「現下の喝采」。高橋優からここに集まったオーディエンスへの拍手が贈られた。