秋田の夏の終わりを告げる風物詩 高橋優、主催フェス『秋田CARAVAN MUSIC FES 2024』オフィシャルレポート
■DAY2 9月22日(日)
2日目の能代市長の開会宣言、高橋優によるテーマソング「秋田の行事」のパフォーマンスに続いてトップバッターで登場したのはキタニタツヤ。「聖者の行進」「次回予告」「スカー」と、言葉による映像喚起力、そして生音とシーケンスを高次元で融合させたハイパーなサウンドがオーディエンスを一気にゆらす。一転、「旅にでも出よっか」など疾走するポップネスが心地よい中盤の構成が素晴らしい。高橋優バンドにも参加しているキーボーディストの平畑徹也と相談してこの日のセットリストを決めたというキタニ。「高橋優さんのファンは歌詞をよく聴く人たちだから、歌詞に自信のある曲をやったらええよ」というアドバイスを平畑からもらったと明かした。5月14日にリリースしたシングル「ずうっといっしょ!」、そしてラストに披露した「青のすみか」のちょっとゾッとするような言葉と歌詞世界がライブを終えてからも沈殿し続けた。 ヤバイ人がステージに出てきちゃったと思った瞬間、ミスチル桜井和寿の美声が響く。モノマネ芸人、だしおさんだ。そのまま桜井の声で歌うフジファブリック「若者のすベて」は、ある意味で奇跡のコラボだった。ここから山下達郎、福山雅治、森山直太朗、尾崎豊などひとりフェス状態に突入。最後はミスチル桜井で高橋優の「おかえり」を披露。なんだろう、得した気分になった。 まずは挨拶がわりに「ebiture」をパフォーマンスし、シアトリカルでダンサブルなステージを披露していった私立恵比寿中学。ACMFとアイドルポップがハイブリッドを果たし、夢見るようなエンターテインメントが展開していった。ライブイベント「秋田分校」の開催や秋田美の国ガールズを務めるなど、秋田とは縁の深いエビ中。「このステージに立てて本当にうれしいです!」というMCに続いて披露したのは、8月17日にリリースした「いろはにODORYANSE」。突然のムチャブリに応えてステージに登場した高橋優もタオルを振って盛り上げた。「トーキョーズ・ウェイ!」から最後は秋田への「YELL」でステージを終えた。 漫談を披露したのは、ピン芸人・街裏ぴんく。かつて、EXILEのボーカルオーディションを受けたことがあると告白。そして、レンタルDVDで借りた『アンパンマン』が変だという話へ。トルコアイス男爵という謎のキャラ、いまいちやる気のないTシャツ&ジーパン姿のアンパンマン……嘘だとわかっていても引き込まれる話芸の迫力に、最初の話もネタなのではないかと、キツネにつままれたような気持ちになった。 一際大きな歓声に迎えられてステージに登場したのは斉藤和義。1曲目は「ずっと好きだった」。8ビートのロックンロールは時代に関係なくいつでも圧倒的に正義だ。「デビュー時のディレクターさんが能代出身でした。ACMFにやっと来れました」。ギターを手にした時の初期衝動を詰め込んだような「Boy」を聴いて、会場にいる、特に地元の若いオーディエンスは何を感じただろう。能代に斉藤和義が来たんだぜ、おれは雨の中それを見たんだぜ──そうした衝動を起こすことこそ、高橋優がACMFを開催している理由のひとつだ。3ピースのロックバンドにしか出せないソリッド、かつ荒々しい音で奏られた「歌うたいのバラッド」「歩いて帰ろう」が能代の大地に染み渡った。 賑やかに登場したニューヨークが「まだ歩いて帰らないで!」と斉藤和義の曲を引用しながらオーディエンスに呼びかける。披露したネタは、悪そうな高校に赴任した高校教師がヤンキーの生徒を更生させるというもの。ヤンキー、教師と役を入れ替えても際立つ嶋佐のクレイジーぶりに的確なツッコミを入れつつも笑って受け流す屋敷の温度感の方に、より深い狂気を見た気がした。 2024年のACMF、トリを飾る高橋優のステージは「ありがとう」からスタートした。「ひとりじゃなくて、ふたり、3人といろんな人のつながりがあってここまでこのフェスをやってこれました」と言うと、昨日に続いて実は会場で観ていたということでその様子を写した写真をビジョンで公開。最初のMCを挟んで披露したのは、秋田の生放送情報番組「サタナビっ!」のテーマソングとして秋田県民にはお馴染みの「オープンワールド」をフルで初披露した。転がるように放たれる言葉が独特のリズムを生むAメロからメロディアスな展開を辿るのが印象的な曲だ。続いて、サビに四季を織り込んだミディアムバラードの「キセキ」が陽の落ちた野外の会場に夏の終わりを告げる風と共に流れていく。「明日はきっといい日になる」「福笑い」では、2日間音楽のバトンを受け継いできたつながりでしかつくれないハッピーな空気が会場を満たしていった。最後に披露したのは、「現下の喝采」。あいにく天候には恵まれなかった今年のACMFだった。しかし、それも野外フェスのいい思い出だ。高橋も言っていた通り、何かひとつでも「よかったな」と思えるものがあれば、それでOKだ。逆に言えば、何もかも苦しいばかりの日々はない。音楽が喝采となって鳴り響き、今年のACMFはフィナーレを迎えた。 秋田にある13の市を巡る「秋田CARAVAN MUSIC FES」、7回目の今回で折り返しを過ぎた。前例のないフェスの次なる一歩へ、また日々をつないでいく。 Text:谷岡正浩 Photo:新保勇樹 <リリース情報> 9thアルバム『HAPPY』 2025年1月22日(水) リリース <ライブ情報> 高橋優 LIVE TOUR 2025『ARE YOU HAPPY?』 ■2025年 2月22日(土) 山梨・YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール) 大ホール OPEN 16:30 / START 17:30 2月28日(金) 大阪・フェスティバルホール OPEN 17:30 / START 18:30 3月2日(日) 福岡・福岡市民会館 OPEN 16:30 / START 17:30 3月5日(水) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール OPEN 17:30 / START 18:30 3月8日(土) 香川・レクザムホール(香川県県民ホール) OPEN 16:30 / START 17:30 3月9日(日) 高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール OPEN 16:30 / START 17:30 3月20日(木・祝) 大分・J:COM ホルトホール大分 OPEN 16:30 / START 17:30 3月29日(土) 宮城・仙台銀行ホール イズミティ21(仙台市泉文化創造センター) OPEN 16:30 / START 17:30 3月30日(日) 岩手・奥州市文化会館Zホール OPEN 16:30 / START 17:30 4月5日(土) 山ロ・山口市民会館 OPEN 16:30 / START 17:30 4月6日(日) 広島・呉信用金庫ホール(呉市文化ホール) OPEN 16:30 / START 17:30 4月12日(土) 鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター) OPEN 16:30 / START 17:30 4月13日(日) 宮崎・都城市総合文化ホールMJ OPEN 16:30 / START 17:30 4月19日(土) 新潟・長岡市立劇場 OPEN 16:30 / START 17:30 4月20日(日) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール OPEN 16:30 / START 17:30 4月25日(金) 秋田・あきた芸術劇場ミルハス OPEN 17:30 / START 18:30 4月26日(土) 秋田・あきた芸術劇場ミルハス OPEN 15:30 / START 16:30 5月10日(土) 長野・レザンホール(塩尻市文化会館) OPEN 16:30 / START 17:30 5月11日(日) 千葉・市川市文化会館 OPEN 16:30 / START 17:30 5月17日(土) 滋賀・滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール OPEN 16:30 / START 17:30 5月18日(日) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール OPEN 16:30 / START 17:30 5月24日(土) 栃木・宇都宮市文化会館 OPEN 16:30 / START 17:30 5月30日(金) 和歌山・和歌山城ホール OPEN 17:30 / START 18:30 6月1日(日) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール OPEN 16:30 / START 17:30 6月15日(日) 北海道・カナモトホール OPEN 16:30 / START 17:30 6月19日(木) 福井・敦賀市民文化センター OPEN 17:30 / START 18:30 6月21日(土) 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール OPEN 16:30 / START 17:30 6月22日(日) 岐阜・土岐市文化プラザ サンホール OPEN 16:30 / START 17:30 6月27日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA OPEN 17:30 / START 18:30 6月28日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA OPEN 15:30 / START 16:30