『わたしの宝物』美羽や宏樹ら“身勝手な大人たち”による混迷 北村一輝のセリフが心に響く
“モラハラ男”宏樹(田中圭)の根本は変わっていなかった?
「私一人の罪だから。悪いのは私。一生一人で背負っていく」と真琴に言い放った美羽だが、その並々ならぬ彼女の覚悟や孤独さに触れてもなお、ジャッジを下そうとする真琴はあまりに想像力が欠如している。そしてそれはやはり宏樹にも言えることだ。 自分は美羽に心配をかけられないから、あるいは合わせる顔がないからと、仕事で苦しいことがあった際にも美羽に一切話せなかったにもかかわらず、美羽の托卵は許せない。もちろん次元は違う話かもしれないが「相手を大切に思っているがゆえに、切り出せないことがある」というケースをつい最近まで自分が経験していたのに、美羽がこの事実を打ち明けられなかったその苦しさよりも、今自分がこの事実を受け入れられない苦しさを優先する。 さらには美羽の「栞は宏樹の子だと思ってる」という言葉を逆手にとって、美羽から栞を奪い、美羽のことだけを家から追い出してしまう。顔も見たくもないという気持ちはわかるものの、突発的に栞と逃避行に出て海に入水しようとしてみたり、帰宅したかと思えば今度は美羽を追い出してみたり。やはりモラハラ男の根本は変わっていなかったようだ。常に自分ファーストで自分が最もかわいい。自身の気持ちこそが優先されて然るべきで、こちらの機嫌を損ねる相手が悪いという稚拙な発想の持ち主だ。 いよいよ混迷を極め始めた本作。身勝手な大人たちに振り回されてしまう栞が何よりの犠牲者に違いないが、最も大切な宝物を奪われてしまい彷徨う美羽はどうなってしまうのだろうか。
佳香(かこ)