揺れ動く“選挙と株式市場の関係”と“石破政権の経済政策” 愛と経済の伝道師 “宗さま” こと宗正彰が解説
◆投票日までの期間、日経平均株価は上昇する?
やしろ:そして、今月の10月27日に衆議院議員選挙があります。投開票日までの間、日本の株式市場の動きも一波乱、二波乱ありそうでしょうか? 宗正:あるかもしれないですね。マーケット参加者の間では、昔から「選挙は買い」という言葉があります。つまり選挙の時期になると株価は上がる傾向があるということなんですが、実際にはどうだったのか。 衆議院の解散前日から選挙の投開票日前日までの株価の動きを見てみると、1969年以降の過去17回、全てにおいて日経平均株価は上がっています。何故なんだろう? って思いますよね。 私が思うに、この期間って本当に選挙戦の真っ只中ですから、日々、私たちは選挙公約を見たり聞いたりします。政治と経済は車の両輪で、経済と株式市場は一心同体ですからね。選挙公約は、基本的には耳障りの良いことしか言わない。特に経済政策的な公約っていうのは、今から良くなるとしか言わない。そこで期待感からの株価上昇っていう流れなんじゃないかなと思います。 やしろ:では、今このタイミングは狙い目? 宗正:あくまでも過去の例で言えばですよ(笑)。 やしろ:でも、過去17回の全てがというお話ですよね? 宗正:過去17回に限って言えばという話です(笑)。今回はイレギュラーなことが多いですからね。新内閣が発足してこれ程の短期間で解散っていうのも戦後最短ですし、何と言っても、私たちはまだ個別具体的な政策の話を聞いていないですからね。 やしろ:ここからですね。 宗正:全てはここからなんですよ。 やしろ:そして石破政権の経済政策ですが、自民党総裁選のときもテレビにたくさん出ていて、政策や公約を耳にしたり目にしたりしましたが、そのときとはニュアンスが変わったような感じがあります。これはどういうことなんでしょうか。 宗正:石破新総理は、これまで与党・自民党にいながらも党内野党って言われてきた人なんですよね。つまり内閣や党の重要ポストから一定の距離を置いて理想的な話をしてきた。それがある意味、国民にも受けていましたが、政権は森山幹事長がトップの自民党、林官房長官がトップにいる官邸、そして石破総理がトップの内閣。この3つで構成されています。 実際に石破さんも内閣総理大臣に就任して、それぞれの声や意見を聞きながら、いわゆる理想と現実の狭間で揺れている、そんな状況なのかなと思います。多分、石破さんも自分が100%総理になるとは確信していなかったと思いますし、決選投票の一つ前の1回目の投票のときには、高市さんが石破さんにかなり差を付けていた訳ですから。 ご参考までにということで言えば、自民党の総裁選で石破さんが訴えていた経済政策は、金融所得課税の強化、法人税の引き上げ。そして脱アベノミクス、つまり利上げ。その他は積極財政の正反対の財政の立て直し。これら全ては株式市場にとっては逆風なんです。そんなことを言っていたから株式市場が下がった訳ですよ。岸田内閣が誕生したときも似たような動きがありましたが、下がる株式市場を見て、これはまずいぞと。それで少しずつトーンダウンして、ニュアンスも変わったというのが実際のところだと思います。 やしろ:そうなると石破政権の経済政策の主軸っていうのは、何になるんですか? 宗正:一言で言えば、岸田政権の経済政策を引き継ぐ。と同時に安倍政権のときのアベノミクスからの脱却です。岸田政権の政策の中でも分かりやすいのは、物価高対策と賃上げですね。物価が上がると生活に困るじゃないですか。ただ物価っていうのは、上がらなければ景気も良くならない。 物価高が悪いのではなくて、物価高と連動して賃金が上がらないことが悪い。そこで石破さんは最低賃金を2020年代の間に時給換算で1,500円まで引き上げると発言しています。 やしろ:それに関しては、経済界からもハレーションが出ていますよね。 宗正:今年度の最低賃金の全国平均が1,055円ですからね。昨年と比べて51円上がっていますが、これは過去最大の引き上げ幅です。2020年代の間にとは言うものの、残りの数年間で毎年どれだけ上げる必要があるのかっていう話です。 やしろ:人件費の急な高騰で倒産してしまう会社なんかも出てくるかもしれませんし、賃上げのスピードやバランスも大事ですよね。 宗正:物価が上がらなければ企業の業績も良くならないし、企業の業績が良くならなければ賃金が増えない。賃金が増えなければ個人消費の拡大は見込めないので景気は良くならない。このサイクルにタイムラグが生じている今、確かにサイクルスピードの視点は重要ですね。 やしろ:そこは本当にそう思います。