Galileo Galileiインタビュー「4人それぞれの人格っていうよりは、今はGalileo Galileiっていう人格として生きている感じ」
――今回は『MANSTER』と『MANTRAL』というふたつのコンセプトに分かれていますけど、BBHFでも『Mirror Mirror』と『Family』というふたつのEPをコンセプチュアルに作ったり、アルバム『BBHF1 -南下する青年-』も2枚組だったりしたじゃないですか。そのときと今回はどう違いましたか? 雄貴 BBHFでやったときは、本当に“表と裏”っていうイメージでやってたんですよ。実際曲も僕の中ではかなり違ったなと思うんですよ。でも今回やりたかったのは、二面性っていうよりは、結局その一部というか。外づらの自分のニュートラルな自分っていうのは裏表じゃないんですよね。全部同じひとりの自分っていう人間の中にあるものなので。1個の中のそのふたつの部分がすごく噛み合ってる気がしたので、その部分を取って考えたっていう。他にもまだまだ人間性について言いたいことも描きたいことももちろんあるんですけど、今僕らが描ける部分っていうのがこの2個かなっていう感じで書きました。だから、相反してるわけじゃないんですよね。同じ場所にあったものなんです。 ――岩井君はこの2作のアルバム、どんな性格の作品になったと思いますか? 岩井 さっき『PORTAL』時代のエピソードも出ましたけど、あのときは遮断したファンタジー的な世界を自分たちで作っていたけど、今は遮断せず、でもちゃんとした軸が自分の中に存在しているっていう。今回制作の中で、雄貴を中心にみんな野球にハマってたんです。 雄貴 急にね(笑)。 岩井 それで野球の関係者と繋がったりとか、毎日みんなで野球の試合を観たりとか、キャッチボールしたりとか。あと、それこそCHICO CARLITO(チコカリート)さんに会ったりとか、黒川侑司(ユアネス)さんに会ったりとか、ポーター・ロビンソンさんと会ったりとか、外部の影響をトランスレーションして変換する力がものすごく身についたなと思っているんです。ある種の『MANSTER』的な自分たちから『MANTRAL』的な自分たちに変えられたりとか、逆に『MANTRAL』的な自分たちを『MANSTER』的な自分たちに変えられたりとか。それは裏表じゃなくてレイヤーだと思っていて。完全に重なってるんだけど、その中でどっちが前に出るかっていうのは、どこにいて誰と過ごすかによって変わっていく。ジャケットも重ね合わせたらレイヤーでほぼ重なる感じになっているので、1枚として聴いてもらってもいいくらいの作品になっているんじゃないかと思います。 雄貴 Galileo Galileiっていうバンドは4人いるんですけど、4人それぞれの人格っていうよりは、今はGalileo Galileiっていう人格として生きている感じがしていて。去年まではサッカー、サッカーって言ってたんですよ。みんなでサッカーの動画観たり試合観たりしていたんですけど、それが今度野球になってっていうのも、誰かがスタートするけど結局それをみんなでGalileo Galileiという人格として楽しんでいるっていう感じ。その人格として描いた2枚が今回のアルバムだという感じが僕はすごくしているんです。だからあまり尾崎雄貴って感じが僕はしないんですよ。今までの作品は感じてますけど、今回は感じてない。なんかすごく、Galileo Galileiっていう人間がいるなっていう感じがします。 ――『MANSTER』は「CHILD LOCK」という曲から始まるんですけど、この曲が歌っているのは要するに生まれてくることの不条理みたいなものだと思うんですよね。そこから始まっていって、いろいろなものに作用されながら生きていく。そういう人生そのものを描いているアルバムなのかなとも思いました。 雄貴 そうですね。「CHILD LOCK」は親がパチンコをやっていて車に取り残された子供の歌なんですけど、それだけだと救いようがないし不条理なんだけど......岩井君とミュージックビデオを作るときにもよく話をするんですけど、エンタテインメントはそのめちゃくちゃダークな不条理を爆発オチで終わらせるようなことができるんですよ。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の主人公がショットガンを持って全員ぶち殺していくっていうふうにしようよ、みたいなことができるんです。音楽のそういうエネルギーっていうのを僕は信じてるんで、「CHILD LOCK」もそういう思いで書きましたね。