Galileo Galileiインタビュー「4人それぞれの人格っていうよりは、今はGalileo Galileiっていう人格として生きている感じ」
――そういうテーマで、あのハードロックな音が鳴り響くというのも面白いですよね。 雄貴 あれは完全に岡崎君からの影響ですね(笑)。 岡崎 Rage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)とか。 雄貴 僕は全然通ってなかったんですけど、岡崎君にいろいろ教えてもらって、一緒にライブ映像とかめちゃくちゃ観て「めっちゃかっけえ」って。めっちゃ遅れて中二病が来てるみたいな感じです、今(笑)。 岡崎 でもその色もやっぱり『MANSTER』には必要な音だったなって思ってて。だから懐かしさはもちろんあるんですけど、その中にもある新しさっていうのをこのアルバムでは表現できてるかなって。 雄貴 あと今回、僕らジャンル感っていうのを......「邦楽にはちゃんとジャンルがないんです」とかって、特にかぶれてたときはめちゃくちゃ言いまくってたんですけど、その猜疑心が今回の僕らにはあまりなくて。 岩井 ジャンルの話はまったくしてなかったね。 雄貴 楽曲の根っこをちゃんとぶっ刺すためには、ある程度ジャンル感を統一していないとどうなるか分からなくなるんですけど、今回はどうなるか分からなくてもよくて。本当に「とりあえずやってみて」っていう感じでした。岡崎君がギターをガッツリ弾いた曲もあるし、僕がベースをそのまま弾いちゃった曲もあるし、ドラムを岩井君が打ち込んじゃった曲もあるし。みんなやっぱりGalileo Galileiとして曲を書いてる。 岩井 ずっとキャッチボールしてる感じ。 雄貴 そうだね。 岩井 お互いどんな球が来るのかな、ちょっとエラーしちゃったな、みたいな感じがずっと続いてて、最終的に気づいたらこうなったみたいな。それぞれの球にそれぞれの意図があって、それは自分のエゴではなくGalileo Galileiという人格としての意図みたいな。だから楽しかったし、キャッチするのも楽しかった。 雄貴 「この間、動画を観てマエケンスライダーを投げられるようになったんだよ。はい」みたいな感じ。みんなそれぞれ思いついたこと、昨日の夜知ったことも全部そのまま出しちゃってる。 岩井 雄貴は『はじめの一歩』をめっちゃ読んでたよね。 ――それもスポーツだ(笑)。 雄貴 もう好きすぎて、「ヴァルハラ」という曲はそのときに書いてる。 岩井 そういう球が投げ込まれてくるんです。 雄貴 で、今度は岩井君がずっと『HUNTER×HUNTER』を読み出して。僕にとってはバイブルなんですけど、岩井君は読んでいなかったんです。そうやって、現在進行形でお互いが何かしら影響を受けているものとか、情熱を感じているものっていうのが少しずつ漏れ出し合っていて。それがすごく出たなって。あと、和樹は結構Vtuberが好きだったり、どちらかというといわゆるオタクコンテンツが好きなんですけど、だから和樹が打ち込みをするとちょっとその要素が入るとか。 和樹 ボカロPっぽい感じとかね。 雄貴 それもバンドとしてそれにストップをかけるのではなく、和樹が出せるものならOKっていう。それすらみんなで料理しちゃおうっていう場だなっていうふうに思います。 ――それは裏を返すと、どんな球投げてもキャッチしてくれるだろうという信頼もあるんでしょうね。『Bee and The Whales』のときはどちらかといえばちゃんとストライクを投げに行く感じだったと思うんですよ。 雄貴 うん、じゃないとダメだったけど、今はもっとラフに投げ合ってる。たまに顔面にぶつけちゃったりとかもしますけど(笑)。あと「取りに行ってくれる」っていうのが大事だと思うんですよね。もしボールをこぼしちゃっても、必ず追いかけてくれる。それが音楽にも出てる感じがします。みんなスルーしないという感じですね。特に、どっちかというと『MANTRAL』はそういう感じがする。『MANSTER』のほうがGalileo Galileiの正当的な次への挑戦に近い気がしているんですけど、『MANTRAL』のほうはかなりグネってモヤってる感じ。でもそれが出たことで、むしろちゃんとふたつ違うものが作れたなって思いました。出す前から言っていたら話にならないですけど、僕は『MANTRAL』のほうが好き(笑)。 ――はははは! 先ほど「Galileo Galileiという人格」という話がありましたけど、『MANSTER』はところどころで人格が破綻している部分があると思うんですよ。 雄貴 うん、そうですね。 ――一方で『MANTRAL』は本当にひとつの生命体のような、有機的なあり方が感じられるなあと思って。よりバンド的だなと思ったんですよね。 雄貴 岩井君と話をしていたんですけど、岩井君も苦しかった時期は車でめっちゃ叫んだりしてたっていうんですよ。「ウェー!」って発散して立って。音楽も、レイジを聴かせてもらって思ったのは、そういう発散をしなきゃなって思ったんです。それでいうと『MANSTER』はそういう発散ポイントが随所にあります。なんか分かんねえけど「うわー!」みたいな。 ――でもそれがまた気持ちいいっていうのもあるし。『MANTRAL』のほうは、より生きてる実感というか、心臓が脈打つ感じっていうのが出てるなと思って。 雄貴 ニュートラルな自分でいられたら、そもそもそうやって発散したくなるようなことはないと思うんですよ。やっぱり社会的に人と繋がったりしてむぎゅーっと凝縮されたことでそれが発生すると思ってるんで。