F-15に乗ると「地球は丸い」と実感できる…戦闘機パイロットしか体験できない「高度5万フィート・超音速」の世界
■気絶と目覚めをくり返し、生還したケースも Gロックは、戦闘機パイロットにとって怖い現象の1つです。気を失い、無線で呼びかけられてハッと目覚め、即座の回復操作で機体の体勢を持ち直す、ということも十分に起こり得るのです。 以前、実際に訓練であったケースですが、あるパイロットがGロックになり、周囲が無線で必死に呼びかけました。 呼びかけにより目を覚ましたパイロットの目の前には、すでに海面が迫(せま)っていました。あわてて操縦桿をグッと引き、回復操作を行なったのですが、そこでまたハイGがかかり、再度気絶して、また目覚める……これを3回ぐらいくり返して生還しました。ただし、本人は気を失っていたので詳細は何も覚えていませんでしたが……。 ■音速を超えた瞬間、何が起こる? F-15の最大速度は時速約3000キロメートルです。マッハに換算すると2.5、音速の2.5倍の速さで飛ぶことができます。 音速を超えると、何が起こるのか。よく知られているように、衝撃波が発生します。ドーンという音がして、空気の波が発生し、周囲に建物があれば窓ガラスが割れたり、人の鼓膜に影響を与えたり、ということが起こり得ます。 では、マッハを超えた瞬間、乗っている人間はどう感じるのか。じつは、まったく変化はなく、そのままの状態で操縦することができます。新幹線や旅客機に乗っていて、乗り物自体は高速で移動していても、乗客はそれほど振動を感じずに本を読んだりコーヒーを飲んだりできるのと同じ感覚で、音速を超えても超えなくても変わらないのです。 超音速を出すためには、パワーが必要です。そのため「アフターバーナー」という機能を使います。これは、ジェットエンジンの排気にさらに燃料を吹きつけて燃焼させ、高い推進力を得る装置です。 戦闘機の場合の最大出力、自動車でいうトップギアを「ミリタリー」といいますが、このミリタリーからもう一段上げると「アフターバーナー」が作動します。トップギアの上にもう1つ“スーパー”があるような感覚です。