墓じまいする? 守ってもらう? お墓・仏壇の相続事情
こんにちは。行政書士の木村早苗です。「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、お彼岸といえばお墓参り。敬老の日のお祝いも兼ねてお参りされた方もいらしたのではないでしょうか。 【図版】購入したお墓の種類「樹木葬」「一般墓」「納骨堂」のシェア(2018年~)
■お墓参りの習慣と今後のお墓 10代の頃は外に出っぱなしだった人ほど、年齢を重ねるほどに連休になると子どもを連れて実家に戻り、お墓参りも済ませてくるという変化を見せるもの。いろんな経験をするうちに暮らしに根づいた慣習の意味に気づいたりするのかもしれません。 その一方で、メディアでは近頃「墓じまい」という言葉を盛んに聞くようになりました。お墓はご先祖様の魂をお骨とともに守る空間でもあり、そう簡単には触ることはできません。民法でも「墓地、埋葬等に関する法律」により、遺骨の扱いや納骨場所などを含めて細かな取り決めがされています。これまでは墓石のあるお墓が当たり前でしたから、意識される機会も少なかったのではないでしょうか。 でも、今後はどうなるかわかりません。ご自身が故郷から離れている方なら喫緊の課題でしょうし、子どもさんが遠方にお住まいであれば今のうちに決めるほうがいい場合もあるでしょう。家族が集まるような機会に、子どもさん方の意見を軽く聞くのもいいのでは。「将来は実家に戻る」、「お墓は私が守るよ」といった言葉があれば安心ですが、逆に全員「戻るつもりはない」「お墓を守る自信はない」ということならば、それ相応の手を打たねばなりません。誰もいなくなった故郷のお墓を守るのは、都会暮らしの人々の間ではかなり大変なことだと思われているからです。 ちなみに、筆者の実家の墓地には全部で9基のお墓があります。十数年前に父が墓石を整理したので、私が幼かった頃に比べるとずっと少なくなりました。それでも湯呑は9個、花は2束4組必要ですし、地面には2カ月もすれば雑草が伸びてきます。 掃除を1人でやるとたっぷり2時間はかかるので、今でも定期的にできる気がしないんですよね。一カ所ならばもう少し楽なのに、と思ったりして(ご先祖様から事務所名をもらっているのに、こんなことを言うと怒られるかもしれないけど)。筆者にとってもお墓は重要な問題であったりします。 ■相続財産とは分けて考えられている祭祀財産 筆者の例は特殊だとしても、都会の霊園墓地等でなければ、草むしりや墓石の掃除など、何かしらのお手入れは必要でしょう。しかし、そうした作業を最も行うべき夏は早い時間から気温が上がり、午前中でも外作業の大変な日が増えています。 こうした問題も避けられて、子どもさん方が気軽にお参りできて、ご先祖様にも安心していただけるお墓とは、一体どんなかたちなのでしょうか。各々のお宅の状況で大きく変わることでもあるので、いろいろと考えさせられてしまいますね。 さて、民法ではこうしたお墓や仏壇、神棚、位牌など宗教に関わるものを祭祀財産と一括して呼んでいます。そして民法897条には、祭祀財産は「慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する」とあります。相続する財産とは別の扱いで、ご本人(被相続人)が指定した方なら責任者は家族でも親戚でも構わないのです。 特に慣習等がない場合は、家庭裁判所が関係者の中から決めます。優先順位としては(1)被相続人の指定した人、(2)慣習に基づき祖先の祭祀を主宰すべき人、(3)家庭裁判所で指定された人、となります。 (1)や(2)は口頭で伝えることもできますが、子どもさんや関係ある親戚と相談の上で遺言書(できれば公正証書遺言)に記載しておくのがおすすめです。お世話の負担が大きくなりそうであれば、前回同様に「お仏壇とお墓のお世話を受けてもらう代わりに、Aには○○円を贈与します」などと負担付贈与のかたちにしてもよいかと思います。 「今までと同じようにお墓を守ってほしい」と思う方は、恐らく少なからずおられるでしょう。今までのかたちが末長く続くのがきっと一番安心で、一番いいことです。でも、そのために次の世代に無理を強いることになるのであれば、それはあまりいいこととは言えません。 ■子どもさんやご先祖様も安心できるお墓のかたちとは 最近では地方でも、一般的な墓石だけでなく納骨堂や合祀墓、集合墓といった永代供養墓も選べるお寺が少しずつ増えてきています。納骨堂は希望する期間は管理費用を支払って個別での安置と供養をしてもらい、期間が経過すれば他のお骨と合祀埋葬され、以降は合同供養になる永代供養の一種。また永代供養付の樹木葬や散骨などの方法も、お子さんを持たないご夫婦やおひとりさまに人気だそうです。