墓じまいする? 守ってもらう? お墓・仏壇の相続事情
終活サービスを提供する株式会社鎌倉新書が運営するお墓の情報サイト「いいお墓」による「第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)」では、「購入したお墓の種類は?」との質問に対し、樹木葬48.7%、一般墓21.8%、納骨堂19.9%という結果が出ていました。この質問が始まった2018年からの変化グラフ(上図)では、2020年に樹木葬と一般墓のシェアが逆転しています。コロナ禍によってお葬式の規模が縮小したのは記憶に新しい話ですが、お墓の選び方にも影響を与えたのではとも思えるような興味深い結果ではないでしょうか。 ただし、このように自分の代で墓じまいをしたり、一般墓以外のお墓を選ぶと決めたりしたのであれば、事前に親戚縁者には伝えておきましょう。ご自身の埋葬方法だけであれば遺言書に方法を記すだけでも構いませんが、「祭祀財産の扱いは継承者○○に一任する」と記載しておけば「まったく知らない遠縁が口を出してくる」問題の大半も防ぐことができます。
加えて「購入したお墓の跡継ぎはいますか」という質問の回答を見ると、数値的には「跡継ぎはいるけども、跡継ぎ不要の墓を購入した」人も数%存在することがわかります。子どもに面倒を掛けたくないという気持ちの表れなのでしょうか。 以前、「お世話を頼む子どもがいないので」と墓じまいをし、樹木葬を選んだという方のお話を聞きました。彼女は「お世話できずに無縁仏にするくらいなら、お世話が必要なく、いつも誰かがお参りに来ているようなかたちがいい」と語り、「お墓を守る責任がなくなって肩の荷が下りた気がする」と微笑んでおられました。いつの時代のものかわからない無縁仏さんの存在を思うと、確かに彼女の考えも一理あると言えます。 宗教に関する慣習も、改めて考える時期に来ているのでしょう。ご先祖様や自分たちの死後を守ってくれる場所、そして意義のある供養とはどういうものなのか。ご家族で話しあってみてもいいかもしれませんね。どんなかたちになったとしても、その本質を考えることは誰にとって有意義な経験になるように思います。 ■ 行政書士/木村早苗 きむらさなえ 1975年滋賀県生まれ。立命館大学大学院卒業。出版社勤務を経てフリーランスライターとして幅広い分野で執筆する。2020年に地元にUターンし、2024年に行政書士登録。行政書士川木清事務所を開設し、障害福祉サービス施設申請業務や遺言書作成や相続サポートを専門に活動中。「川木清(かわきせ)」とは曾祖父の代から使われてきた目印。ねこと音楽と洋裁が好き。
行政書士/木村早苗