獲物を罠にはめるクモたちのスゴ技! 色や匂い、捕まったフリほか 身近なクモの仲間にも
セクシーな匂い
獲物の嗅覚に頼るように進化したクモもいる。 ガを好んで食べるナゲナワグモ属(Mastophora)のメスは、交尾相手を探すメスのガが出すフェロモンを生成して、オスのガをおびき寄せる。ガがパートナー候補を探しに近づいてくると、ナゲナワグモは粘着性のある特殊な絹の塊でガをたぐり寄せる。 ナゲナワグモ属の種によって引き寄せるガの種類は異なり、中には一度に数種のガを引き寄せることができるものもいる。例えば、Mastophora cornigeraは、一晩で少なくとも19種のガを引き寄せられる。 「問題は、彼らが多くの異なるフェロモンの混合物を生成しているのか、それとも1日の経過や季節に応じてシグナルを微調整しているのかということです」と、米ケンタッキー大学の昆虫学者ケネス・ヘインズ氏は言う。ヘインズ氏が主に研究しているMastophora hutchinsoniは、ある種のガに対しては夜の早い時間に1種のフェロモンを生成し、別の種のガに対しては夜の遅い時間に全く別のフェロモンを生成する。 他の種のクモも、魅力を高めるために匂いのシグナルに頼っている。2017年6月に学術誌「Animal Behaviour」に掲載された研究により、コガネグモの仲間Argiope keyserlingiは、プトレシンと呼ばれる腐敗臭を巣に振りまき、捕まえるハエの数を増やしていることが明らかになった。
獲物の獲物やパートナーのように振る舞う
ハエトリグモの中には、Portia属、Cyrba属、Gelotia属、Brettus属など、他の種のクモを食べるのを好むものがいる。しかし、自分の巣にクモを誘い込むのではなく、獲物の巣に引っかかっているふりをする。ハエトリグモは8本の脚と1対の前触肢を使い、巣に絡まった無力な獲物が出すような振動をまねたリズムで慎重に糸を揺らし、自身の獲物となるクモを巣の中心部から誘い出す。 「獲物となるクモの巣を揺らして出せるシグナルは無限にあります」とニュージーランド、カンタベリー大学のクモ学者フィオナ・クロス氏は言う。もしPortia属のクモが新たな種のクモを攻撃しようとしていたり、獲物となるクモの反応がなかったりする場合、Portia属のクモは適切なリズムを得るまで、その場でシグナルを創造的に調整できると、クロス氏は説明する。 また、ケアシハエトリ(Portia fimbriata)は振動を利用し、クモのパートナー候補のふりをすることもある。メスのEuryattusの巣(丸めた葉を絹糸で吊るして作られている)を見つけると、ケアシハエトリはオスのEuryattusが求愛の儀式で使う振動シグナルでその葉を揺らす。Portia属は、以前に見たことがない「初めての試みでも」、この儀式をまねることができる。「信じられないことです」とクロス氏は言う。 専門家が解き明かしたクモのこれらのスゴ技は、おそらくほんの一部に過ぎないだろう。「クモが疑似餌を実際に使っていることを実際に証明するのは本当に難しいです」とモンティグリオ氏は言う。「ですから、クモを研究すればするほど、クモが疑似餌を使っていることがわかるだろうと考えるのは良い仮説だと思います」
文=Sofia Quaglia/訳=杉元拓斗