獲物を罠にはめるクモたちのスゴ技! 色や匂い、捕まったフリほか 身近なクモの仲間にも
色と模様を用いて擬態し、惑わせる
クモの多くはくすんだ色だが、獲物を引き付けるのに役立つ明るい色や様々な模様をもつものがいる。 トゲグモ属(Gasteracantha)は、白やオレンジ、黄色、赤、ピンクなどの色で飾られていることから、英語で「ホウセキグモ」と一般的に呼ばれるようになった。「まるで小さなキャンディのようです」とオーストラリア、シドニー大学の昆虫学者トーマス・ホワイト氏は言う。「ですが、それはだましのシグナルです」 派手な色をしたホウセキグモが巣の中央にいると、通りかかった昆虫は誘惑されて近くに見に行きたくなる。ホワイト氏の研究は、昆虫が鮮やかな色をしたホウセキグモに引き付けられるのは、単にホウセキグモが魅力的だからなのか、それとも昆虫が蜜を吸いに行く特定の花に似ているからなのかを突き止めようとしている。 「それを解明するのは難しいことです」とホワイト氏は言う。どちらの理由も正しいのかもしれない。 2011年に学術誌「Behavioral Ecology」に掲載された研究によると、夜行性のオオジョロウグモ(Nephila pilipes)やコゲチャオニグモ(Neoscona punctigera)でも、体の色や斑点が餌を捕らえるのに役立つことが示唆されている。アシダカグモ(Heteropoda venatoria)も暗がりで獲物をだます色をもつ。頭の光沢のある白い縞模様で、ガをおびきよせるのだ。 カニグモ科の一種であるEpicadus heterogasterは、可憐な白い花によく似た姿に進化した。2017年8月に学術誌「Scientific Reports」に掲載された研究で、人間の目には知覚できないが、花のような形をした腹部が太陽光の紫外線を反射し、ハチやハエの目はそのきらめきを捉えられることが明らかになった。 また、カニグモ科のツケオグモ属(Phrynarachne)は、鳥の糞に似た姿をしている。専門家は長い間、この擬態は主に捕食者を避けるためだと考えていた。しかし、2021年7月に学術誌「Current Zoology」に掲載された研究により、糞の中に卵を産みつけたり、糞を餌として利用しようとしたりするハエを効率的におびき寄せるのにも役立っていることがわかった。