シリアでアサド政権打倒を主導した「ハヤト・タハリール・アル-シャーム(HTS)」とは(海外)
シリアのバッシャール・アサドの政権は12月8日に崩壊し、24年にわたるアサド政権は終焉を迎えた。 シリアを席巻した反体制派の「ハヤト・タハリール・アル-シャーム」がダマスカスを制圧した。 ハヤト・タハリール・アル-シャームについてわかっていることを以下にまとめる。 バッシャール・アサド(Bashar Assad)の24年にわたる統治は、反体制派がシリアの首都ダマスカスに侵攻した2024年12月8日に終焉を迎えた。反体制派が「市内は解放された」と宣言した直後、ロシア外務省はアサドが辞任し、同国を去ったと発表した。その後、ロシア国営通信は、アサドがモスクワに到着し、亡命が認められたと報じた。 アサド政権の崩壊は、ハヤト・タハリール・アル-シャーム(Hayat Tahrir al-Sham:HTS)が率いる反体制派連合軍が奇襲攻撃を開始し、アレッポ、ハマ、ホムスなどの主要都市を数日のうちに制圧した後に起こった。世界中のシリア人が、残虐な弾圧で知られたアサド政権の終焉を祝った。アラブの春の反政府運動の一部である2011年の平和的な反政府デモに対する彼の暴力的弾圧は、内戦を引き起こし、数十万人の死者と数百万人の避難民を生み出し、トルコやレバノンなどの近隣諸国に負担を強いることとなった。アサド大統領の失脚のニュースを受け、各国の指導者たちは慎重ながらも楽観的な見方を示したが、アサド大統領に代わる政府や指導者がどのようなものになるのかについては依然として不透明だ。 主要な勢力の一つとなるのはほぼ確実なのが、アルカイダ(Al Qaeda)の分派とともにイラクにおけるアメリカの占領に抵抗したシリア人、アブー・ムハマンド・アル-ジャウラーニー(Abu Mohammed al-Jolani)が率いるHTSだ。ジャウラーニーは後に祖国シリアに戻り、2012年に結成されたアルカイダの分派であるジャバート・アル-ヌスラ(Jabhat Al-Nusra)やその他の反体制派とともにアサド政権軍と戦った。 ジャウラーニーは2016年にアルカイダとの関係を絶ち、新たなグループを結成し、それが2017年にHTSとなった。それ以来、ジャウラーニーは国際的な正当性を獲得するために、より穏健な指導者であると自らを演出している。アメリカと国連はいずれも、HTSを依然としてテロ組織として指定している。 2021年のPBS Frontlineとのインタビューで、ジャウラーニーは、HTSのテロリスト指定を「真実ではなく信頼性もない政治的なレッテル」と呼んだ。「この革命における10年間の歩みを通じて、我々は西洋やヨーロッパ社会に何の脅威も与えていない。安全保障上の脅威も、経済的な脅威も、何もだ。だからこそ、この指定は政治的なのだ」と彼は述べた。 近年、HTSはシリア北西部のイドリブ県を支配下に置いている。アナリストはアサド政権打倒という最終目標を追求しながら、権力を強化し、イメージの転換を図っていると分析している。イドリブでは、ジャウラーニーは、いわゆるシリア救国政府(Syrian Salvation Government)を樹立し、同政府は、彼の指導力がより広範な地域にもたらす可能性を示すショーケースとしての役割を果たしている。 PBSのインタビューで、ジャウラーニーはイドリブの状況は理想的ではないものの、「イスラムの支配下で国全体を運営できる自己主張的なモデル」があると救国政府について語った。一部では、このグループがアルカイダとのつながりを完全に断ち切ったのかどうか、疑いの目を向けているが、このところは包括性と団結を訴えるメッセージを発信しており、平和的な政権移行を呼びかけ、シリアの宗教的・民族的少数派を安心させている。 「将来のシリアでは、多様性は弱みではなく強みとなる」と、同グループはアレッポの少数民族であるクルド人に対して声明で述べた。センチュリー・インターナショナルの研究員であり、スウェーデン国防研究庁の中東アナリストであるアーロン・ランド(Aron Lund)は、スカイニュースの取材に対し、ジャウラーニーとそのグループは変化したものの、「かなりの強硬派」であると語った。 「広報活動ではあるが、彼らがこのような取り組みを行っているという事実自体が、彼らが以前ほど硬直的ではなくなっていることを示している」と彼は述べ、ジャウラーニーが戦闘員に家屋への立ち入りを禁じ、市民を守るよう指示している様子を映したビデオ映像を引用した。 「昔ながらのアルカイダやイスラム国なら、決してそのようなことはしなかっただろう」 HTSは、イデオロギー的に多様な反体制派の一部にすぎず、反体制派の連合が平和的に権力を共有し、全国に統一的な支配を拡大できるかどうかはまだわからない。「もしできない場合、シリア国内の地域的な分裂と、地域軍閥や封建領の潜在的な出現が急速に拡大するだろう」と、大西洋評議会(Atlantic Council)の中東プログラムでスコークロフト中東安全保障イニシアティブのディレクターを務めるジョナサン・パニコフ(Jonathan Panikoff)はBusiness Insiderに語った。
Nathan Rennolds