“見た目があまりに端正な俳優”、朝ドラからアカデミー受賞映画まで「中身とのギャップ」で輝くワケ
朝ドラでの役もまた、見た目と中身の相違がおもしろい
岡田は現在、出演中の朝ドラこと連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)では、ヒロイン寅子(伊藤沙莉)と事実婚のパートナーとなった星航一を演じている。彼もまた、見た目と中身の相違がおもしろい。 『ラストマイル』ではすきっと聡明そうな額を見せているが、『虎に翼』では当初は目まで隠れそうに前髪で覆っていて、現在はちょっと分けて少し額がのぞき、その前髪に白髪が数本をつくり、老け感を出している。前髪によってずいぶん印象が違う。 『虎に翼』の航一は、戦前、総力戦研究所に所属し、日本は戦争したらどうなるかシミュレーションしていた過去を後ろめたく思っているという設定で、8月15日の終戦の日生まれの岡田が、戦争について思うところのある役というのは運命的だなと感じさせる。 航一は50代で大学生の子供がふたりもいる設定だが、実年齢・30代の岡田とは三兄妹に見えてしまう。この若見えパパという感じや、一見優男ながら、重たい過去と悲しみを背負っている星航一の魅力を岡田将生は存分に演じている。つまり人は見かけによらない。
『ドライブ・マイ・カー』では屈指の名場面も
朝ドラと平行して深夜に放送中のドラマ24『錦糸町パラダイス~渋谷から一本~』(テレビ東京)では岡田は表向きは地元住民や再開発が進み増えた観光客向けのフリーペーパーのライター、実は世の悪事を暴くために証拠の動画や画像を二次元コードで町中にばらまいているという、これもまた2面性のある人物。 黒尽くめで口数少なく、部屋でキーボードを叩いているあやしさ満載である。 岡田の代表作でカンヌ国際映画祭で4冠、米アカデミー賞で国際長編映画賞作受賞作『ドライブ・マイ・カー』のちょっとミステリアスな俳優役は最たるものであろう。 ここでは、原作では四十代の役を岡田の実年齢に合わせ引き下げたそうだ。この俳優が秘めていたものを車のなかで語る場面は屈指の名場面となった。
いまどきの青年役かと思うと、つばめのように印象が翻る瞬間が
『ラストマイル』ではいまどきの令和のよくできた青年役かと思うと、やっぱりある瞬間、つばめのように印象が翻(ひるがえ)る瞬間がある。社会派映画にもなりそうな題材をみんなが楽しめるエンタメにするために岡田将生は大いに尽力している。 舞台挨拶でお腹が鳴ったニュースが2度もヤフトピになってしまうところもギャップが魅力の岡田らしい。 『ラストマイル』2024年8月23日(金)公開 ©2024 映画『ラストマイル』製作委員会 <文/木俣冬> 【木俣冬】 フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami
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