“見た目があまりに端正な俳優”、朝ドラからアカデミー受賞映画まで「中身とのギャップ」で輝くワケ
主演ふたりは現場を俯瞰して見る立場であることがポイント
よくぞ大渋滞にならずに2時間9分に纏(まと)めたと感心するし、主演の満島と岡田は、俳優として華もテクニックも人気も一流な共演者たちに断じて埋もれてはならない。その重責に、満島ひかりと並び岡田将生は見事に応えていたと思う。 満島ひかり演じるエレナはエリートでおしゃれで業務優先だけれど、どこか抜けている感じのところもある。梨本は岡田将生が演じているからシュッとしているけれど、上司のエリナに振り回されて辟易(へきえき)している演技などもさりげなく見事であった。 この手の映画は、現場で働く庶民と現場を足で捜査する刑事など労働者側が観客の代弁者としてメインに据えられることが多いが、『ラストマイル』のふたりは管理職側のほうで、現場を俯瞰(ふかん)して見る立場であることがポイントである。 ブラックな労働網を上からみているようで、彼らもまた網のなかにとりこまれているのではないかというホラー感覚を、満島と岡田がうまい塩梅で醸(かも)してみせる。
岡田将生は見た目と中身のギャップを演じるとき輝く
塚原、野木、新井チームの作品に参加するのが念願だったという岡田は公式サイトでこうコメントしている。 「どんな役でも参加したいと熱望していたのがようやく叶い、そしてとても難しい役を頂き、現場では常に頭を抱えながら監督と満島さんと、この難しい脚本に臨ませてもらいました。 脚本の野木さんとは以前お仕事させてもらってからだいぶ時間が空いたのですが、この脚本の密度が濃すぎて重たい何かを渡された感じでした。 満島さんも10年以上ぶりでして、この方の前で嘘がつけない。見透かされる。 こんなにも自由に、嘘がなく、カメラの前に立つ姿は見惚れてしまうほど素敵でした。 この映画から皆さんが受け取る、感じ取るものは様々だと思いますが、こんなにもワクワクする映画もないかと思われます」 同じく公式サイトで満島は、岡田のことをこう表している。 「共演は14年ぶりでしょうか? やっぱり岡田将生さんは不思議な佇まいを持つ俳優さんで、彼にしか出せない品性とおかしみをとても素敵に感じます。柔らかいのに男性らしい、岡田さんの背中に何度か助けて貰いました。静かなるサポートに、感謝しています」 岡田将生はあまりに見た目が端正なので、どうしてもちょっと特異な役を任されることが多くなるのだが、見た目と中身のギャップや、見た目に隠された秘密みたいなものを演じるときにもとても輝く。