従来以上にシャープな切れ味! フォルクスワーゲン・ゴルフ Rへ試乗 全天候対応の万能アスリート
明らかに活発 スムーズでニュートラルな操縦性
発進させれば、ゴルフ Rはフェイスリフト前より明らかに活発。回転数を問わず、一層レスポンシブになったことは疑いようがない。特に、中回転域でのたくましい伸びに驚かされる。最大トルクの発生域が広がり、高回転域でも力強い。 刺激的なエンジン音を生成する、サウンド・アクチュエーターも改良済み。アクラポビッチ社製のチタンマフラーはオプションだが、これと組み合わせるとボフボフ・バリバリとなかなか楽しい。 前に357mmのベンチレーテッド、後ろに310mmのソリッド・ディスクが組まれる、ブレーキは申し分なし。試乗場所はドイツ西部のラウジッツリンク・サーキットだったが、ストレートエンドで何度フルブレーキを与えても、フェードの兆候はなかった。 ブレーキペダルの感触も素晴らしい。確かな踏み応えが、ドライバーへ自信を与える。 ゴルフ Rのシャシー調整を担当したチームは、ブガッティ・ヴェイロンやシロンを担当した、フロリアン・ウンバッハ氏が率いた。彼によると、フィーリングとフィードバックを豊かにし、魅力的で躍動的な運転体験の提供が目指されたという。 果たしてステアリングは、確かに感触が鮮明。適度に重く反応は線形的で、運転体験の中心要素になっている。漸進的な姿勢制御によって、限界領域も察知しやすい。 トルクスプリッター・デフは、従来よりソフトに振ったとウンバッハは説明する。これに、トルクベクタリング機能と四輪駆動システムが加わり、スムーズでニュートラルな操縦特性を獲得している。
乗り心地や燃費は良好 全天候対応型の万能選手
サーキットでレース・モードを起動。コーナーでフルパワーを解き放つと、多くのトルクが外側のリアタイヤへ割り振られ、アンダーステアが打ち消される。 タイヤは抜群のグリップ力を披露する、235/35 R19のブリヂストン・ポテンザ。オプションの、レーシングパターンだった。 これほどの走りを許容するハッチバックでありつつ、乗り心地は良好。ゴルフ GTIよりハードとはいえ、ダイナミック・シャシー・コントロール(DCC)で組まれるアダプティブダンパーが効果を発揮し、肉薄なタイヤでも快適性を担保している。 英国価格は、4万3895ポンド(約843万円)から。ゴルフ GTIより4495ポンド(約86万円)高いだけといえ、訴求力は低くない。お手頃とはいえないが、アウディS3やBMW M135 xドライブなどよりは安い。 燃費は、カタログ値で12.4km/L。フェイスリフト前の試乗では、高速道路の巡航で15.5km/Lを計測した。0-100km/h加速4.6秒のモデルとして、褒められる数字だろう。 今回のアップデートで、ゴルフ Rの魅力が増したことは間違いない。全天候対応型の、万能選手的な特長に変わりはない。それでいて、従来以上にシャープな切れ味も楽しめる。操縦性の自然なバランスで、積極的にパワーを展開できる。 ◯:圧巻の高速移動を叶えつつ、誰でも運転できるほど親しみやすい 四輪駆動の安定性 過去のR以上にクルマとの一体感が強い 新しいインフォテインメント・システム △:低速域での乗り心地 価格に見合わないインテリアの質感 ステアリングホイールのタッチセンサー
フォルクスワーゲン・ゴルフ R(欧州仕様)のスペック
英国価格:4万3895ポンド(約843万円) 全長:4290mm 全幅:1789mm 全高:1458mm 最高速度:270km/h 0-100km/h加速:4.6秒 燃費:11.8-12.4km/L CO2排出量:184-193g/km 車両重量:1548kg パワートレイン:直列4気筒1984cc ターボチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:332ps 最大トルク:42.7kg-m/2100-5500rpm ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(四輪駆動)
グレッグ・ケーブル(執筆) 中嶋健治(翻訳)