「王貞治ベースボールミュージアム」 王会長が描いた栄光の足跡と”野球を広めていきたい”想いを具現化した体験型施設の歴史
現代に再現された一本足打法の原点「荒川道場」
展示コーナーでは、王会長を語る上で外せないエピソードが再現されている場所がある。それが”荒川道場”。王会長の代名詞である”一本足打法”が誕生した伝説の道場である。 恩師である荒川博コーチとの二人三脚でつくりあげ、”世界の王”へと繋がったたこの場所を、特別映像と共に見ることができる。 この再現には、ある人物の尽力を欠かすことはできなかった。 「荒川道場の再現は、荒川博コーチのご親族にもご協力いただいています。荒川日誌の展示をしているのですが、こちらも荒川氏のご親族の皆様のお力添えを頂いております」。 この日誌では2人との間にどんなやりとりがあったのか。努力の軌跡の一端を知ることができる。
特別展示は内川聖一選手への取材がきっかけ
ミュージアムにある展示コーナーには、王会長の足跡をたどるもの以外のエリアも存在する。 それが、期間限定の特別展示である。主に現役選手や監督にフォーカスしたもので、関連する選手の戦利品や写真などを交えて紹介している。 特別展示が誕生したきっかけは、ドーム内にミュージアムがあった2017年にさかのぼる。当時は主力選手をピックアップした展示を行っていたが、あの選手と話をしたことで発想が広がった。 「内川聖一選手と春季キャンプでお話する機会をいただいたんです。そこで聞いたのは高校時代のことでした。 足を手術した影響で2年生の時に全くプレーできず、野球を辞めようと何度も考えていたそうです。それでもご両親や弟さんの支えがあって、野球を続けて今があるんだと。 私もそういったお話を表現できればいいのではないかということで、テーマとストーリー性を持った企画展にしようと考えました」
現在のチームメイトによる甲子園での対戦秘話
テーマはタイミングを逃さぬよう逆算をしながら、綿密に練って実現まで持って行っている。 「かかりきりで3ヶ月、2本ほど並行して進めています。私が選手に取材していて、当時の記憶を呼び起こして言葉を引き出してもらうので、写真を事前に集めて見ながら取材します。なので写真をどれだけ集められるかが勝負なんです」 ここで、今はチームメートの選手同士がかつて大舞台で対戦した時のエピソードを披露してくれた。 「高校野球をテーマにしたもので、明豊高校(大分)の今宮健太選手と沖縄尚学高校の東浜巨選手が甲子園で対戦した企画がありました。 マウンド上に東浜選手・二塁ランナーが今宮選手だった場面があったんです。 それで、東浜投手はこれまで投げていなかったスライダーを投げたそうなのです。次の回の攻撃で明豊高校の投手は今宮選手。そしたらいきなりスライダーを投げたそうなんです。 東浜投手もおかしいなと思ったそうで、今宮選手が二塁からスライダーの握りを見たのかをお2人に訊いたらその通りだと。そんなエピソードを盛り込みました。 投手のボールの握りを二塁から見ないですよね。さらに投げたことない球を次の回、しかも甲子園でいきなり投げられる度胸。それを展示コーナーでご紹介しました」 9月23日に4年ぶりのリーグ優勝を果たしたホークス。現在はパーソル パ・リーグ優勝特別展示が12月初旬頃まで開催されている。 今後も話題に合わせた企画を出していくとし、道広氏は日々構想を練っているという。 「BOSS E・ZO FUKUOKAでも期間限定で催しを行っていますし、王会長の展示を活かしながら真新しさをどんどん出していきたいです」
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