神社存亡の危機はZ世代に届くか 「らしくない」ポスターで全国の護国神社がキャンペーン
終戦80年を迎える令和7年を控え、郷土の戦没者をまつる全国の護国神社52社が参拝を呼び掛けるキャンペーンを始めた。広報ポスターはあえて宗教色を前面に出さず「らしくない」デザインを採用。戦争の記憶が風化し、参拝者が減少する中、Z世代といわれる若い世代に期待を込める。各地の護国神社がまとまって宣伝活動に取り組むのは初めてのことだといい、神社存続の危機感がうかがえる。護国神社としては斬新な試みに踏み切った全国護国神社会の泉和慶会長に事業の背景や目的について聞いた。 ■「知っていますか」 52社が集まる全国護国神社会は約1年前に委員会を立ち上げ、キャンペーンについて話し合った。ポスターは試作品が何枚もつくられた。護国神社の出すメッセージには「英霊」「国家」といったキーワードが入るのが定番なのだが、今回はあえてそうしたものを選ばなかったという。 採用された1枚は、白いTシャツにベージュのスカート姿の若い女性が夜明けの海岸にたたずむ構図。やわらかく温かな印象を受ける。キャッチコピーは「知っていますか 命をかけて私たちを守ってくれた人たちのこと」。続くメッセージは「護国神社は日本を守るために戦没された二百四十六万余柱のみたまをお祀りし日々平和を祈念しています」と述べるにとどめ、参拝を求める直接的な表現は避けた。 泉会長は「激しい議論の末、時間をかけ、ここにたどり着いた」と振り返る。 ポスターは神社会で1万2千枚印刷。神社以外に地元の企業や団体にも掲示を要請した。 さらに、神社本庁も全面協力。ポスター2万5千枚、同じデザインのチラシ5万枚を印刷し、傘下の約8万社に掲示を呼び掛けた。 難しい継承、神社経営が課題 護国神社は都道府県ごとにあり、その地域の戦没者を「英霊」としてまつっているが、戦没者遺族の高齢化や時代の流れのなかで、存続が難しくなっている側面があるという。 戦前は国の管理下にあり、経済的にも支えられていた。このため、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は軍国主義の象徴ととらえ、国との関係を断つことを命じたという経緯もあった。 GHQとの交渉に挑む際には、全国の護国神社の宮司が靖国神社に集まり、存続のための話し合いがもたれたという。