「HAKAMADA」の文字隠し要請 静岡地裁の対応「違法」と提訴 袴田さんの支援者ら国相手に 再審公判で支援バッジも制限
袴田巌さん(88)の再審公判を傍聴した支援者に上着の「HAKAMADA」の文字を隠すよう求めたり、支援団体のバッジを外すよう要請したりした静岡地裁の対応は違法などとして、支援者の清水一人さん(76)=浜松市中央区=らが13日、国に330万円の賠償を求めて東京地裁に提訴した。「法廷の秩序の維持」を根拠とした権力の行使に制限はないのかー。清水さんは「無罪判決が確定したことは袴田さんにとって最高の結果だったが、あしき前例をそのままにはできない」と訴える。 訴状によると、清水さんは4月24日の第14回公判を傍聴する際、入廷前の所持品検査で地裁職員から胸元に着けていた支援団体のバッジを外すよう命じられた。さらに職員は清水さんのパーカの背中にある「FREE HAKAMADA」の文字のうち、名前の部分が見える状態では入廷できないとして、養生テープを重ねて貼り付けた。国井恒志裁判長は休廷時、バッジを着けていた弁護団の小川秀世事務局長らにも取り外すよう命じた。地裁から命令の必要性や理由に関する説明はないという。 清水さんは提訴後の記者会見で、テープを貼られた際の心境を「笑うしかなかった。周囲に注目され、『どうしたの』と聞かれた」と振り返った。 原告には清水さんと小川事務局長のほか、23年6月に同性婚を巡る訴訟の判決を福岡地裁で傍聴する際、多様性を象徴する虹色の靴下を隠すよう命じられた明治大法学部の鈴木賢教授(64)が名を連ねた。 裁判所法は法廷の秩序の維持を目的に、裁判所の職務を妨げたり、「不当な行状」をしたりする者に裁判長(裁判官)が必要な事項を命じ、処置を執ることができるーと定めている。清水さんらの弁護団の亀石倫子団長は静岡、福岡両地裁の対応はいずれの要件も満たしていないとして、「裁判長によって判断がまちまちでいいのか。どういう場合に法廷警察権が行使されるのか、ある程度の基準を示してほしい」と述べた。 静岡地裁は「裁判に関わることなのでコメントは差し控える」としている。 <メモ> バッジは袴田巌さんの支援団体の会員章で、直径21ミリの円状。パーカは日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会が行ったクラウドファンディングの寄付者への返礼品。清水一人さんは4月の再審第14回公判で、バッジの取り外しなどを求めた地裁の命令に従って入廷。弁護団の小川秀世事務局長は公判後にバッジ着用の容認を求めて意見書を提出したが認められず、第15回以降は外して出廷した。同様に裁判所から服装の制約を受けたケースは2023年、再審無罪が確定した西山美香さんが国と滋賀県に損害賠償を求めた訴訟で、西山さんが法廷で着ていた冤罪(えんざい)救済団体の名前が入ったTシャツを今後は着用しないようにと大津地裁が要請した事例などがある。
静岡新聞社