福岡では衝突トラブルが…パトカーマニアが覆面パトカー装い衝突事故「ニセ覆面パトカー」大きすぎる罪
ある交通事故が世間の関心をさらった。2月17日未明、福岡市中央区天神の交差点で、青信号に差し掛かった個人タクシーが緊急走行中の覆面パトカーと衝突するという事故が発生した。しかし、その覆面パトカーは真っ赤なニセモノだったのだ。 本物にしか見えない…本村陸容疑者が昨年秋頃まで乗っていた”ニセ覆面パトカー”【写真】 自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の容疑で5月8日に逮捕されたのは、ニセ覆面パトカーを運転していた長崎市の会社員、本村陸容疑者(24)と助手席に乗っていた福岡県北九州市の会社員、仰木康汰容疑者(25)。 福岡県警の調べに対し、「パトカーが緊急走行をしていたので追いかけるために緊急走行をした」と、身勝手極まりない理由を供述した。 同容疑者らはパトカーマニアとして活動しており、SNSに現場で撮影したパトカーの写真などを投稿していた。日頃よりパトカーが緊急走行をしていたら後を追いかけることに熱心だったという。 現職の警察官に今回の件を尋ねた。 「パトカーを含め緊急車両は事故防止のため緊急走行中の交差点進入時は、基本的に一時停止や最徐行等を行い、マイクを用いて周囲の車両等に止まってもらうように広報を行います。近年、自動車の遮音性は向上しており、音楽等を聴きながら走行しているとサイレンを含め音が聞こえづらいため、緊急走行をしているこちら側が防衛運転をさらに徹底するしかない。 しかし今回のニセ覆面パトカーはサイレンを鳴らしマイク広報していたものの、明らかに速いスピードで交差点に進入していたので事故が起きるのは当然。被害者の皆さんが気の毒で仕方ないし、厳しい処分があって然るべき。素人が真似事で行った罪はあまりに大きい」 本村容疑者が運転していたのはトヨタカムリというセダンだが、実際に覆面パトカーとして全国で活躍しており、それを模していた。覆面パトカーを製作するには赤色灯やサイレンを鳴らすためのサイレンアンプやスピーカーが必要になるが、この手のアイテムはオークションサイトなどで誰でも購入できるのだ。 本村容疑者は昨年秋以降に今回事故を起こしたカムリに買い替えていたようで、それまではスズキキザシというこちらも全国で活躍する覆面パトカーになっている車種を愛用していたという。 本村容疑者と仰木容疑者を知るパトカーマニアは「本村容疑者はいつも静かというか根暗な感じ。挨拶してもあまり返答がなかった。仰木容疑者は対照的に明るく社交的な印象でした。しかし昨年のG7広島サミットの際に自身と関係ないであろう、集合住宅の敷地内から警察施設を撮影していたり、撮影に熱心なあまり周りが見えなくなっていた印象もある」と話す。 この手のニセパトカー事件やパトカーマニアが関連する事件は過去にいくつか起きている。 1998年、当時自衛官の男がニセ覆面パトカーでローリング族を停車させ、乱闘騒ぎを起こし、偽造警察手帳まで所持していたという事件があった。’09年1月には、警察車両としてあまり採用されていない車種を覆面パトカーとして製作し、サイレンを吹鳴させ、赤色灯をダッシュボードに載せて「緊急走行」していた犯人が巡回中のパトカーとカーチェイスを起こした。さらに’14年には、パトカーマニアの男が警察署駐車場に侵入し、覆面パトカーのアンテナを複数盗むという数々の犯罪行為が過去に発生していた。 マニアの行き過ぎた行動のせいで、日夜奮闘している警察官や警察車両が本物かどうか疑問を抱く市民を増やしてしまった今回の事件。ニセ覆面パトカーで世間を騒がせた罪は大きい。 撮影・取材・文:有村拓真
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