70年近くも昔にパワステやATを標準装備! 時代を先取りしたロールス・ロイス「シルバークラウド」を振り返ろう!
1955年から1965年にかけて3つのシリーズ展開される
アップグレードはそれだけにとどまらなかった。エヴァーデン氏とブラッチリー氏が監督するデザイン・チームのエンジニアは、シャシー設計でも大きな進歩を遂げ、溶接ボックス構造の採用によりねじり剛性は46%向上した。またATギアボックスが初めて標準装備され、1956年にはパワーステアリングも装備された。 1959年に発表されたシルバークラウドIIは6.2L V8パワーユニットを搭載してエンジン出力を20%向上させた。このモデルは外観はほとんど以前のままであったが、1962年に発表されたシルバークラウドIIIは外観が大きく変更された。ボンネットはラジエターの高さを3.8cm下げるために前方に傾斜し、ヘッドライトはシングルユニットに代わって横長のデュアルヘッドライトが採用された。 サイドライトはウイング上部から中央部へと移動し、この時代の大きな安全革新のひとつである点滅式ウインカーが組み込まれた。1965年までにシルバークラウドは役目を終え、シルバーシャドウに受け継がれていく。 2000年代初頭、元チーフ・スタイリングエンジニアのジョン・ブラッチリー氏は初代デザイン責任者のイアン・キャメロン氏に新型ファントムのコンセプトを提示された。ブラッチリーが承認したのはそのうちのひとつだけで、後にファントムVIIとなるデザインとなる。
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1955年に登場したシルバークラウドは3つのシリーズをもつ。Iは4887ccの直列6気筒エンジンだったが、IIで6227ccのV8エンジンが搭載される。IIIは主にデザインの変更で丸目4灯が採用された。これまではロールス・ロイスとベントレーは異なるチューニングを持つエンジンを搭載していたが、この時代からはベントレーと同じスペックを持つクルマとなり、違いは僅かなデザインだけとなった。 このシルバークラウドをデザインしたジョン・ブラッチリー氏はベントレー「Rタイプ・コンチネンタル」をデザインしたことで有名である。そして彼のデザインは、現代の「コンチネンタルGT」にも色濃く継承されている。そしてこのシルバークラウドの荘厳でいて、英国らしくエレガントな彼のデザインは現行のファントムに継承されている。ロールス・ロイスとベントレーにとってジョン・ブラッチリー氏の果たした役割は大きい。
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