あの「ミキモト」イメージがガラリと変わったなぜ、業界も驚いた斬新なコラボが契機になった
イメージビジュアルも斬新で、人種や性別、年代の異なる4人のモデルが「ラッキー アローズ」を身に着けている。表情や身体の動きと呼応して「ラッキー アローズ」が煌めき、それぞれの人としての個を引き立たせている。モノクロの画像に、ピンクのロゴのコントラストがチャーミングな印象を与えている。発表以来、着実な手応えを感じているという。 ■「変えてはいけないこと」と「変えていくこと」 老舗ブランドがトップとして輝き続けるには、伝統に裏打ちされたフィロソフィーを貫きながら、時代に先駆けた活動をしていくこと――いわば「変えてはいけないこと」と「変えていくこと」の双方のバランスを取りながら実践することが求められる。
この難しい課題について聞いたところ、「変えてはいけないことは、ブランドが持っているヒストリーと、業界のオピニオンリーダーであるというポジションです」と明快な答えが返ってきた。 ミキモトは、1893年に世界で初めて真珠の養殖に成功し、今年で131年を迎える老舗ブランド。創業者である御木本幸吉氏は、「世界中の女性を真珠で飾りたい」という夢を描き、ミキモトを立ち上げた。 当時、天然真珠は1000個の貝の中に1個あるかないかという大変希少な存在だったものを、養殖によって生み出すことはできないかと試行錯誤を繰り返し、世界で初めて実現したのである。
一方、開国によって欧米文化が流入してはいたものの、ジュエリーは庶民にとって、まだ遠い存在だった。そんな中、御木本氏はヨーロッパのジュエリー文化を日本に導入しようと、職人をヨーロッパに送り出し、ジュエリーのデザインや技術を徹底して学ばせたのである。「これは大きな産業になるという先見性を持っていたのです」(中西さん)。 そして、ヨーロッパのジュエリー文化を日本に紹介しながら、日本独自の技と創造性をのせた「ミキモトスタイル」とも言えるものを確立した。世界から認められるトップブランドとして、確固たる地位を築いたのである。こういったヒストリーについて、中西さん自身が折に触れて話すようにしているという。