全国でじわり広がる「ラーケーション制度」、最新事情から課題まで、新しい学びと休暇のカタチを取材した
家族で休日を過ごせない観光産業従事者に向け
愛知県と同じく、2023年9月から導入したのが大分県別府市だ。別府市立の小・中学校の児童生徒を対象に、平日の家族旅行を推奨し、旅育の推進と平日や閑散期の観光需要シフトによる地域経済の活性化を目指す取り組みで、「旅」と「学習(study)」を組み合わせて「たびスタ」休暇と名付けた。別府市は祝休日が忙しい宿泊業・飲食サービス業に携わる人の割合が全国平均の倍となっており、平日に家族との時間を確保するねらいもある。 また、2024年度4月からラーケーションの導入に踏み切ったのは、茨城県、栃木県日光市、沖縄県座間味村だ。茨城県は108校を対象に最大年5回までと、3日の他県市村と比べ、取得できる日数が多い。市町村立学校では愛知県と同様に保護者などとの活動が前提だが、県立学校では体験活動がおこなえるのであれば必ずしも一緒でなくても取得できる。 活動の例として、大学や専門学校の見学など、平日しかできない学び体験を推奨しているのも特徴だ。県は「これからの社会では、自己のあり方や生き方を考えながら、課題を発見し解決していく力が求められており、地域に出かけたり、多くの人と出会ったりする体験的・探究的な活動を通して学んでいくことが有効。家の人と思いや悩み、不安について一緒に考えることで、これまでの生活を振り返り、今後を見つめる機会にもなる」としている。 栃木県日光市や沖縄県座間味村でもラーケーションが始まっている。ともに大分県別府市と同じく観光産業などサービス業に携わっている人が多く、親子で休日を過ごせない家庭が少なくない。ラーケーションが定着すれば、雇用の促進や生産性の向上につながる可能性もある。 沖縄県座間味村は村の児童76名が対象で、最大3日まで取得できる。まさに観光産業の島であり、第3次産業に従事する村民は9割。愛知県の導入を知り、より状況が近しい別府市の助言も得ながらラーケーションの制度を設計した。村の担当者は「平日、休日問わず仕事で忙しい保護者が多く、旅行の有無は問わず、何よりも子どもたちが家族と過ごす時間を確保したいと考えた」と話す。ただ、今後は沖縄本島への家族旅行など、制度の拡充も視野に入れる。「取得できる日の増加、本島での観光施設の入館補助など、取得状況、意見を見ながら検討していきたい」(村担当者)。