工藤公康「広岡式・西武の練習量はけた違い。でもその意味に後から気づき…」合氣道家・藤平信一が探る<頭で理解>と<体で覚える>の決定的違い
どんな仕事もスポーツも勝って成果を上げるためには、妥協せず自分を追い込むほどの厳しさが欠かせません。一方でハラスメントを恐れるあまり、「ぶれなさ」「必死さ」を次の世代にうまく伝えられないリーダーが増えているのではないでしょうか。国内外の経営者が師事する「心身統一合氣道会」会長藤平信一氏のもとにも、指導者の悩みが多く寄せられています。厳しさとハラスメントの根本的な違いは何なのか?多くのリーダーを見てきた藤平氏が工藤公康さんらとの対話をもとに語ります。 【書影】若い人へ「勝負の厳しさ」をどう伝えるか?新時代の育成論『活の入れ方』 * * * * * * * ◆100メートルダッシュ100本って意味ある? 今回はまず「優勝請負人」と呼ばれ、チームを何度も日本一に導いた名将・工藤公康さんからうかがった現役時代の話を紹介したいと思います。 工藤:「西武での練習は想像を絶するものでした。いまなら、それを見た人が『いじめだ、シゴキだ』と騒ぎ立て、SNSで炎上するかもしれませんね。当時、キャンプが始まる3週間前、1月10日はユニフォームを着て“球団主導の自主トレ”が行われていました。 100メートルダッシュ×100本。これがウォーミングアップです(笑)。終えると足が動きません。そこにコーチが優しい声をかけてくれます。 『よく頑張ったな。明日は半分の本数にしてやる』と。翌日、本当にその通りになります。 200メートルダッシュ×50本。たしかに本数は半分になりましたが、総距離は同じ。 っていうか、さらにきつい(笑)。ただし、これはウォーミングアップです。そこから全体練習を行い、投手はピッチング1時間、ランニング1時間、強化1時間を行います。クールダウンでもコーチはストップウォッチを持っており、タイムトライアルなんです。」
◆頭で考えるより前に、瞬時に動けるようになる 工藤さんのお話は続きます。 工藤:「当時は『何でこんなことをしなければいけないんだ』と、不平・不満を抱えながらやっていました。もちろん、文句を言ったところでどうにもなりませんから、耐えるしかない。ほぼ強制的にやらされていた練習です。 ただし、そのときにはわかりませんでしたが、後になって気づくのです。この練習こそが、その後の野球人生につながっていたのだ、と。 この練習によって球が速くなったわけでも、変化球を会得できたわけでもありません。でも、プロとして生き残っていくための最も大切なことが身に付いているのです。 なにが身に付いたのか? ひと言で表すと“基礎”です。 ケガをしにくい体になった。反復練習に耐えられる体になった。そして、頭で考える前に瞬時に反応できる神経がつくられたのです。 これが『常勝西武』と言われた秘密です。広岡達朗監督は『管理野球』などと言われ、厳しいことで有名でしたが、それは事実の一側面をとらえただけです。広岡野球の根底には、徹底的な基礎づくり、土台づくりがあることを、私はこの身に刻んでいるのです」(以上、工藤氏)
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