国連報告者が見た在沖米軍/基地周辺でのPFAS問題/「軍事活動、汚染源に」
有害物質への調査・報告のため沖縄を訪れた国連特別報告者のマルコス・オレリャーナ氏。嘉手納基地や普天間基地周辺で有機フッ素化合物・PFAS汚染の状況を調べました。県民とともに生き、命をつないできた水が汚染されている状況はどう映ったのか?詳しくお伝えします。 沖縄を訪れたのは、国連特別報告者のマルコス・オレリャーナ氏。基地問題の解決に向けた国際世論の形成を図るため県が招きました。 企業局長(当時)「大工廻川から高濃度のPFOSが検出されたこと」「比謝川においては大工廻川との合流部より下流において濃度が上昇していることから」「発生源は嘉手納基地である可能性が高い」 水道水源へのPFASの混入を県が公表したのは2016年。汚染の原因特定のため、県や地元市町村は基地への立ち入り調査を求め続けていますが実現してきませんでした。 オレリャーナ氏の招へいは、国連への報告書に沖縄のPFAS汚染の状況を盛り込んでもらい、日米両政府に対応を迫る狙いがあるとみられます。19日には、嘉手納基地や普天間基地の周辺を巡り、PFASの汚染状況の視察をしています。 航空基地ではPFOSを含む泡消火剤が長く使われてきた経緯もあり、周辺の水の汚染への影響が指摘されてきました。オレリャーナ氏が視察したのは、高濃度のPFASが検出されている嘉手納町の「屋良ウブガ―」や宜野湾市の「チュンナーガー」。 字屋良共栄会・池原一会長「子どもが生まれたときに、産湯をとって、子どもを清める。とても大切な場所」 喜友名区自治会・知念桂子会長「今でも区民の皆さんの健康祈願や、五穀豊穣を願う聖地の場でもあり」「こんこんと湧き出る豊かな水と、チュンナ―ガ―の美しさは区民の自慢の場」「このようなチュンナ―ガ―が汚染されているのは残念でならない」 今は高濃度のPFASが検出されている湧き水も、集落に生きる人々の命を繋ぎ、歴史を紡いできたことを住民たちはオレリャーナ氏に訴えていました。 オレリャーナ氏「皆さんの視点や証言を共有していただき、ありがとうございます」「皆さんの言葉を国連総会に届けることになると思う」 在独米軍基地司令官「ワシントンDCの国防総省によって承認され、テキサスの陸軍環境司令部から資金を受けたこの革新的な処理システムを協力して実現できたことを誇りに思う」 先月、アメリカ陸軍がドイツのアンスバッハ駐屯地で公開した施設。軍側の予算で、地下水のPFAS浄化のために稼働した施設です。一方で、PFAS汚染を巡って、地元が求める基地への立ち入り調査さえ認められない沖縄。視察の翌日、開かれたシンポジウムでオレリャーナ氏はこのように強調していました。 オレリャーナ氏「(海外基地の汚染対応は)ケースバイケースだ」「各海外基地の判断、運用予算で行う」「軍事活動と汚染物質の報告によると、軍事活動は世界的に汚染の原因になりうる」 今回の沖縄訪問を通して、沖縄のPFAS汚染の実態を目にしたオレリャーナ氏。一連の日程を終えて開いた会見でこう述べています。 オレリャーナ氏「軍事施設とPFAS汚染の関連性は明らかだ」「この問題の結論を出す前に米国政府と日本政府の見解も聞きたい」「汚染者負担の原則は、国際的な環境法であると同時に、人権に関する法律でもある」「軍事活動がこの原則の例外になる理由はない」 オレリャーナ氏は軍事活動と毒物をテーマに来年、報告をまとめ、国連に提出するといいます。国連が沖縄の現状を変えうるのか。県民の命を繋いできた水が汚されている現状が、少しでも変わる原動力になることを、願ってやみません。