羽田の航空機衝突事故、日航から「救援要請」を受けた中小企業とは リサイクル業社長が明かす航空機解体の裏話
豊富産業グループは、米国に本部がある「航空機リサイクル協会(AFRA)」に加盟し、解体と分別を認められている。 航空機の解体は、重機があれば誰もができるというわけではない。航空機メーカーや航空会社の信頼を勝ち取り、解体した部品の売り先を見つけるところまで整える必要があるという。 高倉社長が航空機の解体ビジネスに関心を持ったのは十数年前、役目を終えた大量の飛行機がアメリカの砂漠に整然と並ぶ「飛行機の墓場」を雑誌や映画で見たことだった。 「単純な発想だった。 〝アルミの塊〟が大量に捨ててあって『もったないよね』って。いろいろ調べたら、エンジンとランディングギア(降着装置)以外は二束三文。俺たちならリサイクルできるし、収益を上げられる」と映った。 ▽ジャンボ機でも1機5億円 高倉社長は「航空機の解体ビジネスは部品の販売が全てだ」と打ち明ける。 機体前方が2階建てになった大型の機体が特徴的で、大量輸送で日本人の海外旅行を身近にしたジャンボ機(ボーイング747)の場合、退役した1機の調達価格は5億円だという。ジャンボ機の生産を終える前の最終型747―8型は、2022年時点の1機当たりのカタログ価格が4億1840万ドル(約640億円)だった。
退役後の機体は、四つ備えたジェットエンジンが一つ当たり1億円で計4億円。ランディングギア(降着装置)も1億円が相場感という。 それ以外の胴体や座席、金属などの装備品はリサイクルされずに捨てられるか、解体されずに放置されるかし、ほとんど利益を生まないと考えられているという。 ▽捉えた参入余地、格納庫で「極秘」に始動 それでも高倉社長は「航空機のリサイクル業者は世界中にたくさんあるわけではないので、そこには参入の余地があるはずだ」と目を付けた。 豊富産業グループが初めて航空機の解体を手がけたのは2022年5月。これは国内初の大型商用機の解体プロジェクトでもあった。 それまでは日本の航空会社は航空機を解体する前に同業他社に中古機として転売するか、ヨーロッパやアメリカの企業に解体や売却を依頼するしかほぼ選択肢がなかった。 最初に解体した機体は日航の大型機ボーイング777―300型で、全長74メートル、全幅約61メートル、座席数500だった。部品はエンジンを含めて約300万点を使ったとされ、解体作業は羽田空港の格納庫で「極秘」に進められた。