「Ultraman: Rising」世界の大地に立つ―自由になったウルトラマンが特撮を超え、歴史を超える日
神は細部に宿る
映像について述べよう。専門外ということもあってCGは〝最先端水準〟だということ以上には語ることができないのだが、劇場用作品並みのクオリティーと、エンドロールのスタッフ数の多さから、当作にはかなりの制作費が投入されていることが察せられる。また、相当な奥行きのある3D空間設計にはかなりのレンダリングと、それに伴う膨大なマシンの数が必要であることが分かる。またスピードの速いカットでもオブジェクトのラインはブレずにクリアであり、フレームやリグ(キャラクター操作のシステムやインターフェースのこと)の基礎設計がしっかりとしていることも伝わる。 各国用のローカライズ版があるのかは知らないのだが、私の見た配信では東京の有名なロケーションが極めて精緻に再現され、またプロダクトプレースメントなのか、実際の商品名やデザインがそのまま描画されており、周到な事前取材とクリアランスが取得されていることが理解できる。極めて丁寧な仕事である。」 〝神は細部に宿る〟という円谷イデオロギーは北米にも世界にも通底している。それは取りも直さず日本の先人クリエーター群が撮り続け、各国でローカライズされ続けたウルトラマンたちの活躍のお陰なのだろう。 脚本も北米の定石である〝家族〟を基点としたドラマツルギーを下敷きに、万人が受け入れることのできる喜びや驚き、ペーソスを詰め込んで書き上げられている。さらに、現実の団体名や個人名を多数登場させることで作品には現実的なスケール感が生まれ、見る者の臨場感を高めているのも特徴である。いったいどれほどの渉外と調整が行われたのか!
父と子、絆という文化
本作を貫くのは父と子の葛藤する姿だ。現在のウルトラマンの世界ではウルトラの父と息子のタロウがおり、さらにそのタロウやセブンの息子のウルトラ戦士たちも登場している(3代!)。誕生からすでに50年余を過ぎ、ウルトラマンは大ファミリーとなったが、これまではそこに、現実のわれわれが抱えるようなリアルな家族の隔絶や、ヒーローとなる事を忌避する主人公の心根はそれほど描かれていなかったように思う。本作はそんな新世代の、そして核家族的な現代の実相を映し出しながらも、絆を再確認させようと展開する。 かつての子どもたちと、現在の子どもたちに贈られる、あたたかく、切なく、うれしい、ウルトラの新しい神話なのだ。
公野勉