『ブギウギ』成長した愛子役・このかが背負う重責 趣里と渡り合う堂々のパフォーマンス
放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)では、ヒロイン・スズ子(趣里)の娘が8歳の小学生に。この成長した愛子を演じる存在として、このかが登場し、さっそく主演の趣里と渡り合うパフォーマンスを披露している。本作でいま最大の注目を浴びているのはほかでもなく、この“愛子=このか”である。 【写真】スズ子(趣里)を脅迫した小田島大(水澤紳吾) 第24週「ものごっついええ子や」は、羽鳥善一(草彅剛)の作曲二千曲記念のビッグパーティーからはじまり、スズ子が自宅に近隣住民を招いての、愛子の8歳を祝う誕生日パーティーの様子が描かれた。 豪華なホームパーティーを開催してもらえるだなんて、はたから見れば羨ましいかぎりだが、かんじんの愛子はどうも浮かない様子。心ここにあらず、といった具合である。 時は1955年であり、まだ終戦から10年ほどしか経っていない。基本的にスズ子はいつも華やかな世界に身を置いているが、あの当時のみながそうだったわけではもちろんない。そこには生活水準の大きな格差があり、日常的に一般家庭の小学生たちと交流しなければならない愛子からすれば、さまざまなズレを感じずにはいられないだろう。彼女は周囲の子どもたちと馴染めず、うまくいっていないみたいだ。 一般的に8歳というと、自我が一気に膨らんでくる時期だ。たんなるワガママなどではなく、自身の意思や考え、もっといえば価値観を持つようになる頃。経済的に恵まれた環境で育ったとはいえ、大好きな「マミー」にあれこれ勝手に決められるのは、決して気分のいいものではないだろう。このタイミングで、このかは小野美音からバトンを受け取り、愛子として登場してきたわけである。そこにはさまざまなハードルがあり、一筋縄ではいかないはずだ。 ここから愛子の印象が大きく変わったのは、やはりこれまでと比べて彼女が明確な自我を持ったこと。演じるこのかは、愛子を主体性を持ったキャラクターとして演じなければならない。このかも愛子と同じく8歳だ。演じるうえで何を手がかりにしたのだろうか。 私たちは年齢を重ねるにつれ、他者とのズレを感じ、また同時に共通点も見出すようになる。けれども8歳の子どもが、生まれた時代も環境も異なる8歳の人物像をイメージして演じるのはかなり難しそうだ。もちろん、8歳児ならではの親(=大人)に対する感情は、大きな手がかりになったであろうことが想像できる。しかしそれだけでは、すでにこの『ブギウギ』の世界観で共有されていた“親娘像=スズ子と愛子の関係”を築き上げるのは難しい。子役だって作品の世界観に影響を与える存在だ。しかもこの第24週は愛子の主役回といっても過言ではない。このかは幼くして、なかなかの重責を背負っている。 とはいってみたものの、何もかもが彼女に押し付けられるわけではもちろんない。真の主人公はスズ子であり、主演は趣里だ。シーンを牽引していくのは彼女である。 一連のシーンを観ているかぎり、アクションを起こすのは彼女のほうであり、このかはこれに応対するようにリアクションを繰り返している。そして趣里の演技の熱が上がれば、このかの演技の熱も上がっている。このかという幼い俳優は、ガラリと変わった環境に柔軟に溶け込み、その場その場におけるベストな“返し”ができる者らしい。 しかし、アクションを起こすのは“スズ子=趣里”のほうだと先述したが、そのアクションを起こさせるベースをつくっているのは“愛子=このか”である。一つひとつの場面にいかに存在するかで、シーンの流れは変わってくるはず。浮かない表情だけで自身の内面を視聴者に伝えることに長けており、場の空気をつくる力も優れている。本作でいま最大の注目を浴びているのはほかでもなく、やはり彼女なのだ。
折田侑駿