髙山 大「食事はWellbeingの重要なファクター」OCEANS AWARD受賞者インタビュー
予約の取れないイタリア料理店として知られる「メゼババ」のオーナーシェフの髙山 大さん。 ▶︎すべての写真を見る 「今は分かりやすい幸せが頭打ちの時代ですよね。だからこそ自分の利益だけを追求するのでなく、半径5mだけでもいいから、人のためになるようなことをしたい。そうしないと社会全体の幸福度が下がってしまうと思っています。 人や立場によって幸せの尺度は違うけれど、みんなにとって楽であることこそがWellbeingで、じゃあ、僕に何ができるかなと考えると、それはやっぱり“食”なんですよね。 食を通して『この感じいいな』という時間と空間を共有することが、お客様にとっても、自分にとってもウェルビーイングに繋がると思っています」。
感情も料理のエッセンスになる
実際、食事はウェルビーイングの重要なファクターになると、近年さまざまな調査や研究が行われている。 「不思議なのは、料理はレシピもあるし、サイエンスでもあるんだけど、感覚的な要素がすごく大きいこと。例えば、自分がイライラしていると、塩気が強かったり、苦味が増したりするんです。味見をして苦いと『こんなにイライラしてたら、そうなるわ』って逆に料理に気付かされることもある」。
ただ、料理の味が多少ブレようと、感情にあえて制限をかけないのが髙山さん流。イライラしていたり、落ち込んでいたり、そんな感情も髙山さんの料理のエッセンスとなるからだ。 「昔は安定した料理を出すことが重要だと思っていて、何があっても冷静でいられるように感情をコントロールしていました。そうしたらだんだんつまらない料理を作るようになって、作っていても楽しくない。好奇心もないから、アイデアだって出てこない。 で、あるとき『これじゃ、ダメだ。このままじゃ壊れる』って気付いたんです。そこからはうれしいときはうれしい、嫌なときは嫌、落ち込むときはしっかり落ち込む。そのほうがいいやって思うようになりました」。
自分の可能性を発掘することに夢中
最近、髙山さんが夢中になっているというのが、埋没している自分の可能性を発掘すること。仲間はもちろん、さまざまな人と話して、飲んで、自分が料理を通して何ができるのかを考えている。