シェブロンのヘス買収に暗雲、賛否問う株主投票でISSが棄権促す
(ブルームバーグ): 米石油大手シェブロンによる530億ドル(約8兆2900億円)でのヘス買収計画の賛否を問う株主投票について、影響力のある米議決権行使助言会社が棄権を呼び掛けた。
インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は13日、買収の評価額やその過程に加え、南米ガイアナ沖の大型油田開発の権益を巡るエクソンモービルとシェブロン間で起きている係争の仲裁に関して時間的な枠組みが不確実な状態にあるといった懸念要因を挙げ、ヘスの株主は投票を保留すべきだと説明。仲裁の行方を見極める「より多くの時間」を確保するため、延期案に賛成票を投じるべきだとしている。
一方、ヘスの大株主の一社であるHBKキャピタル・マネジメントは、ISSの提案に同意し、今月28日に予定されている株主投票を棄権する意向を示した。
シェブロンとして過去20年間で最大規模になる見込みのヘス買収は、今回の動きで打撃を受ける可能性がある。ヘス買収案件は米連邦取引委員会(FTC)の承認がなお必要。エクソンとの仲裁を巡る問題の解決も不可欠で、これは少なくとも年末まで長引く可能性が高い。
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13日の米株式市場では、シェブロン株が0.8%安、ヘス株が0.5%安となった。ヘスの株価とシェブロンの買収提示額との差は1株当たり9.03ドルと、5.6%縮小した。
ガイアナ権益
ヘスは世界で最も高成長を遂げている油田開発の一つであるガイアナのスターブルーク鉱区の権益を30%保有するが、エクソンはそれに対する先買権を主張。同開発プロジェクトを運営するエクソンは45%の権益を保有する。シェブロンとヘスは、企業合併のケースでは、先買権が適用されないと反論している。エクソンは3月、国際商業会議所(ICC)にヘスが保有する権益を巡るシェブロンとの係争について仲裁を申し立てた。
ISSは、シェブロンとヘスが「買収発表後の数カ月間にわたって」先買権について「株主に迅速な報告をしない判断を下した」と指摘。「報告の遅れを踏まえると、投資家には両社が意図的に情報を隠していたと考え得る正当な理由がある」としている。