トランプ新政権で仮想通貨はどうなる? いきなり「推進」に舵を切った理由
仮想通貨に熱を上げるトランプ氏
また7月には、テネシー州で開催されたビットコイン関連イベントで、このようなスピーチをしている。「私が大統領に選出されたら、米政府が現在保有している、あるいは将来取得するビットコインをすべて、100%維持することが私の政権と米国の政策となるだろう」 今、米連邦保安局は、犯罪などで押収した仮想通貨を国庫に保管している。その量は、ビットコインなら、12月9日現在の価値で2兆円以上に当たる21万BTC(ビットコイン)にも上り、保安局は定期的に競売にかけて市場に戻している。こうして仮想通貨を売却すると、仮想通貨が市場に増えて、価格下落を招きかねない。トランプ氏は、そういった競売などをせずに、ビットコインの価値を維持する効果的な使い方を模索している。 トランプ氏の仮想通貨熱はかなり上がっているようだ。選挙期間中には、新たな仮想通貨ビジネスのプロジェクトを家族と一緒に立ち上げている。「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI=World Liberty Financial)」だ。WLFIは中央集権的な管理をしない分散型金融(DeFi)のプロジェクトで、2025年の始動に向けて動いていると見られる。すでに投資家からカネを集めており、仮想通貨に精通しているとされる息子バロン・トランプ氏が関与していくようだ。 またトランプ氏は、仮想通貨に否定的なバイデン政権で米国証券取引委員会(SEC)の委員長を務めてきた人物を解雇すると宣言。代わりに、仮想通貨を支持しているポール・アトキンス氏を後継者として指名している。トランプ政権が仮想通貨の普及を後押ししていく強い意志が感じられる。
第2次政権ではビジネスをより重視する?
さらにトランプ政権で新設される役職の「AIと仮想通貨の最高責任者」として、デビッド・サックス氏を指名した。サックス氏は、トランプ氏の側近になっているイーロン・マスク氏と同じ元ペイパルの起業家で、出身地も同じ南アフリカだ。サックス氏は、マスク氏が2022年にTwitter社を買収した際にも資金提供をした。 ちなみに、マスク氏とサックス氏はトランプ氏の選挙戦で、副大統領候補としてJ.D.バンス氏を強く推薦したという。バンス氏は大量にビットコインを所有しており、仮想通貨に明るい。 仮想通貨を強力に支持するマスク氏とサックス氏の2人は、トランプ氏に深く食い込んでおり、今後の政権運営でも仮想通貨推進を進言していくことは間違いない。トランプ氏はこう言っている。「仮想通貨の業界を嫌っている人よりも、業界を愛している人たちがルールを策定することになる」 ただ現実には、トランプ氏は自分や自分の周りにいる仮想通貨を推す仲間たちがもうけるために動いているようにも見える。トランプ氏が自分のビジネス的利益のために大統領という地位を最大限に利用しようとするのは今に始まったことではないが、2期目でもう再選を目指す必要がないことから、第1次政権以上にビジネス「ディール」(売買・取引)を重視する可能性がある。 もうすでに、トランプ氏の動きが利益相反に当たると批判する声も聞こえてくるが、第2次政権には仮想通貨のさらなる発展が期待できるかもしれない。ただ予測不能といわれるトランプ氏だけに、その動向からは目を離さない方がいいだろう。 (山田敏弘)
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